2023-01-01から1年間の記事一覧

「枯れ葉」

フィンランド語による「枯れ葉」の流れるエンドロールが終わったとき、誰か拍手してくれないかな、そしたらこちらも熱烈に応じるのにと思ったことでした。残念ながらわたしは先頭切って手をたたく勇気を欠いていて心のなかでの拍手となってしまいましたけれ…

「雨に咲く花」

「およばぬこととあきらめました、だけど恋しいあの人よ…」 井上ひろしが歌った「雨に咲く花」(作詞:高橋掬太郎、作曲:池田不二男)のレコードは一九六0年(昭和三十五年)七月に発売され百万枚を売り上げたという。ちなみにフランク永井の「君恋し」は翌…

英語のノートの余白に (12)cream puff

レイモンド・チャンドラーはストーリー・テリングに優れた作家とは思わないが、読者の情感にさざなみを寄せることには巧みで、その最たるものとして遺作『プレイバック』のあの人口に膾炙したやりとりがある。いまさら引用するのもはずかしくなるほどよく知…

英語のノートの余白に(11)look、watch、 see、 stare、 view、 glance

江川泰一郎『英文法解説』に、視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚の五感についての説明があった。人を主語として五感を二つに分類すると、意志を持つ場合と持たない場合とがあり、前者はlook(at),listen(to),feel,taste,smell,後者はsee,hear,feel,taste,smellと…

英語のノートの余白に(10)文末の前置詞

江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)を読んでいると、不定詞に伴う場合の前置詞の位置についていくつか例文があり、なかにGive me something to remember you by.(あなたを思い出すよすがとなるものをください)という一文があって、思わずニヤリとした。…

「JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版」

一九六三年十一月二十二日のアメリカ合衆国第三十五代大統領ジョン・F・ケネディ暗殺事件から六十年、映画「JFK」のオリバー・ストーン監督が今回はドキュメンタリーで事件の真相に迫っています。 ケビン・コスナーが暗殺事件の捜査に執念を燃やす地方検事を…

英語のノートの余白に (9)governess

ヴィクトリア朝時代の小説を読んでいると、しばしばガヴァネス(governess)という言葉を見かける。裕福な家庭に雇われ、住込みで子供たちの教育と訓練を担当する女性のことで、子供たちの身の回りの世話をするのでなく、もっぱら教育に従事する。ふつう対象…

英語のノートの余白に(8)As time goes by

英語のノートの余白に(7)からだいぶん間があいたが、もう一度O・ヘンリー「最後の一葉」を取り上げてみたい。 肺炎に罹ったのを機に生きる意欲を失ったジョンズィ。往診に来た医師はスウディを廊下に呼び出して、彼女の生きる可能性は十にひとつくらい、そ…

明鏡止水

宋の李瀆素という人、酒を好み人が節酒を忠告すると、養生にはこれが一番、好きな物を飲んで余生を送るなんて楽しいではありませんかと答えた。 艾子が飲み過ぎて吐いた。門人たちは師の酒を諌めようと豚の腸を吐きものに混ぜて五臓の一つが欠け四臓になって…

東京レガシーハーフ2023

ビヤホールでの飲み会でジャニーズ事務所のことが話題になり、恥ずかしながらめずらしく吼えた。会社の先代社長の極悪非道はわかっているが、それを反省し改革に踏み出そうとしている東山やイノッチという人にビール屋のオヤジがやれ社名を変更せよとか所属…

「SISU/シス 不死身の男」

超冒険活劇に心躍る、興奮の九十一分でした。公式サイトには、「ランボー」「マッドマックス」をミックスしたアドレナリン全開の面白さ、フィンランド版「怒りのデスロード」といった文字が踊っていて、正真正銘おっしゃる通りなのデス。 一九四四年、第二次…

「ダンサー イン Paris」

堅牢な設計にして、ほどよい潤いを帯びたパリやブルターニュの魅力の映像にたびたびうっとりしました。(といえばなんだかhardにしてgentleといわれたあの私立探偵みたいですけど) ストーリーを追うのが苦手なわたしの悪癖かもしれないのですが、素敵な映像…

英語のノートの余白に (7) The falling leaves

ワシントン・スクエアの西側の古びたアパートに貧しい芸術家たちが住んでいる。そのなかのひとりジョンズィが肺炎を患った。診察した医師はジョンズィの友人スウディに、病状よりも生きる気力が問題だと告げる。医師が懸念した通り、心身ともに疲れ、人生に…

英語のノートの余白に (6)bullbaiting

昔のイギリスでは、犬をけしかけ熊や牛を噛ませる、あるいは犬どうしを噛ませあって血だらけになるのを見て楽しんでいて、これを「ベア・ベイティング」(bearbaitingクマいじめ)や「ブル・ベイティング」(bullbaiting牛攻め)と呼んでいた。ベイティング…

イコライザー THE FINAL

ある事情でシチリアに渡ったロバート・マッコール(ゼンデル・ワシントン)でしたが、そこで負傷し、やっとのことアマルフィ海岸沿いの静かな田舎町(ダスタモンテとか言ったかな?思い出せない、架空の名称でしょう)にたどり着きます。そこで温かく接して…

ラグビーW杯フランス大会開幕

九月四日。ダナン空港を発ち無事成田に到着。往復の航空機では読書スランプながらほかにすることもないので若山牧水の歌集と随筆を読んだというより眺めていた。なかの一首。 人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ これと似た、ウィスキ…

『昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲』

十月二日からNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の放送がはじまった。それに先立って番宣の一環だろう八月にNHK出版新書で輪島裕介『昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲』が出版された。 いまの流行歌やJポップとかはほとんど知らない。その代わり…

ベトナム旅行〜ダナン、フエ、ホイアン

八月三十一日。早朝、京成上野駅から成田国際空港へ向かい、十時三十分発ベトナム、ダナン空港行きの航空機に搭乗したのはよかったが、台風の影響のため二時間近く待たされようやく出発した。あらかじめ遅発がわかっていたななら、機内じゃなく、できればミ…

都心猛暑日過去最多

クエンティン・タランティーノ『その昔、ハリウッドで』(文藝春秋)を読んでいる。映画のノヴェライゼーションとのことだが、スクリーンにはなかった映画談義がどどーんとぶち込まれていて、楽しさ満載、ずいぶんとお得感がある。田口俊樹氏の訳筆も大いに…

英語のノートの余白に(5)men

英語の学び直しの一環で伊藤和夫『英文解釈教室』(新装版、研究社)を読んでいる。Amazonのコメント欄には、旧帝大クラスを志望する受験生のほかは必要度は高くないとあったから、止しておこうかなと思ったが、そこまで書かれると怖いもの見たさがよけい募…

英語のノートの余白に (4)“Prints it?”

コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収める「赤い輪」の冒頭、下宿屋の女主人ウォーレン夫人が、十日前から住んでいる下宿人の様子があまりに風変わりなのでホームズのところに相談にやってくる。 その下宿人は朝から晩まで部屋のなかを歩…

英語のノートの余白に(3) emotional coloring

江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)を読んでいるとときに英文法って面白いなと思う。さすが柴田元幸、西村良樹、森田修『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』(アスク出版)に「これ1冊持っていれば十分かもしれません。読み物としても大変面白く」と紹…

英語のノートの余白に(2)coquettish

美食批評の名著として誉れ高い『美味礼讃』で、著者のブリア=サヴァランは、ロマネスクな恋愛、コケットリー、モードこそが現代社会を牽引する三つの大きな原動力であり、これらは生粋にフランスの発明であり、とくにコケットリーという概念に関しては、フラ…

英語のノートの余白に(1)application

英語の勉強で読んでいる江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)の例文に、Next Tuesday is the deadline in your application.とあり、お恥ずかしい話だが一瞬戸惑ってしまった。applicationをアプリケーションソフトと解したために、どうして?!となったわ…

原発処理水の放出に思う

八月二十四日、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出がはじまった。 原発については不測の事態を考えるとないに越したことはない。現状では難しいだろうから、将来に向けての基本的な方向として原発をなくしてゆくほうがよい。そのためには代替エ…

「アウシュヴィッツの生還者」

社会人になって二年目、おなじ職場に学徒出陣で応召された方がいて、いつもいつもあの戦争について考えているのではないけれど八月だけはそれまで読んでいる本は中断してでも戦争についての本を読み、考えるようにしているとおっしゃっていました。一九七0…

ホームズまみれの日々

語学学習用にリライトされたシャーロック・ホームズ短篇のアンソロジーを終えたので、いよいよコナン・ドイルの原文に進んだ。とはいえ一人立ちはまだ難しくまずは柴田元幸、西村義樹、森田修の先生方による『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』に取り組…

「思い出のサンフランシスコ」

むかし英語の授業でleaveという単語を習ってかすかな戸惑いを覚えた記憶がある。去ると残していくというふたつの意味がうまく結びつかなかったのである。おっちょこちょいは去ると残るなら真逆じゃないかと思ったような気もする。 あらためて辞書の語釈を列…

「警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件」~事件の記録と捜査の証言

「警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件」(山本兵衛監督、Netflix)はイギリス人女性、ルーシー・ブラックマンさん(当時二十一歳)が二000年、東京で失踪し、その後遺体で見つかった事件のドキュメンタリーで、事件の経過、内情とともに犯罪捜査…

献辞余聞

自身の著書を、友人知人や尊敬する方に贈る際、通例として献辞とともに相手の名前をしるす。ところがときにこの献呈本が古書店に出ていたりする。古本屋廻りの好きな方ならおわかりだろう。わたしも何度かそうした献呈本をみている。 著書を贈ったからとて相…