2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

芥川比呂志を読む

所用で帰郷した。本は持たずに帰り、実家に預けてある未読本のなかから芥川比呂志『決められた以外のせりふ』と『肩の凝らないせりふ』の二冊を取り出し、気の向くままあちらこちらの頁を繰った。先日中村伸郎のエッセイを読み、親友だった芥川比呂志のエッ…

隊商宿の屋上で(土耳古の旅 其ノ二十八)

高い所と見るとすぐ上りたがる人がいる。ほめられることはまずないが、わたしもその一人で、さっそくキャラバンサライの屋上に出てみた。 石田幹之助『長安の春』には唐の都の車馬の往来が述べられていて、宮廷の儀仗に迎えられた外国からの賓客のきらびやか…

一定不変

男は娼婦を買うのと買わないのに分類されるという説がある。ほんとかどうかは知らない。仮にこれを認めるとして、二つの割合はどうなっているのか、時代によってこの割合は変化するのか、しないのか、という問題にぶつかる。 永井荷風の作品の多くは芸者や娼…

隊商宿の中庭で(土耳古の旅 其ノ二十七)

隊商宿はふつう中庭がある二階建ての建築物で、一階は取引所、倉庫、厩、管理人や使用人の住居にあてられ、二階は客人である隊商の商人たちの宿泊施設となっていた。(Wikipedia)駱駝や馬を入れなければならないので入口の天井は高い。 石田幹之助先生の名…

金目の話〜チョー極私的ミクロ経済篇

内閣府が11月17日に発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は実質で前期比0・4%の減となり、民間調査機関の予想をだいぶん下回るものとなった。 わたしは東日本大震災のあった年の三月末で定年退職し、翌月から年金生活となった。もちろん年収は大きく…

キャラバンサライ(土耳古の旅 其ノ二十六)

コンヤからカッパドキアに向かう途中すこし長めの休憩があり、ここで希望する方は入場料三トルコリラでキャラバンサライ(隊商宿)の見学をどうぞと案内があった。 ガイドの説明もなかったのでここが何という町で、この隊商宿がいつの時代のものなのかはわか…

『歳月』

みこしは土地っ子がかついで、和風のうちののきさきをしずかに、ゆっくり、もみながら進んでいくのでないといけない。なのに洋風建築が多くなり、職場と住居が分かれてかつぎてをよそから借りてこなくてはいけなくなった、それやこれやで東京のまつりがつま…

メヴラーナ博物館(土耳古の旅 其ノ二十五)

メヴラーナ博物館はメヴラーナ教団の創始者ジェラルディン・ルーミーおよび教団発展に尽くした高僧たちの霊廟であり、かつては修行の場だった。この教団はセマという独特の旋回舞踏で知られていて館内には竹笛や太鼓が展示されていた。 宗派や教義については…

「ヒールは高く、スカートは短く」

和田誠さんの名著『お楽しみはこれからだ』の表紙を飾るのは「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンのイラストで、往年の大女優の「セリフなんかいらないわ。私たちには顔があったのよ」というセリフが引かれている。セリフと顔はトーキーとサイレント…

コンヤ(土耳古の旅 其ノ二十四)

コンヤはパウロがキリスト教の布教に訪れたことで知られる都市イコニウム (Iconium) の後身だから、初期キリスト教の重要舞台である。キリスト教への改宗に際してはユダヤ人からの迫害もあったという。 東ローマ帝国のもとでもキリスト教の都市として栄えた…

金目のはなし

先の内閣改造で、東京電力福島第一原発事故に伴う汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設をめぐり「最後は金目でしょ」と発言したことで批判を浴びた石原伸晃環境大臣の留任は予想通りなかったが、しかしこの「金目発言」は奇妙なエピソードとしてわたしに…

「蜂蜜」(土耳古の旅 其ノ二十三)

佐藤忠男氏にトルコ映画の評論があったとおぼえているが、ご縁はないだろうと読み落とした。以前職場の同僚に「真珠の耳飾りの少女」のDVDを貸してあげたとき、お礼にと持ってきてくれたDVDがトルコ映画だったが、題名を忘れてしまっているくらいだから観た…