旅と散歩

ベトナム旅行〜ダナン、フエ、ホイアン

八月三十一日。早朝、京成上野駅から成田国際空港へ向かい、十時三十分発ベトナム、ダナン空港行きの航空機に搭乗したのはよかったが、台風の影響のため二時間近く待たされようやく出発した。あらかじめ遅発がわかっていたななら、機内じゃなく、できればミ…

町で見つけた歴史遺産

ご近所の谷中を散歩していると写真の遺物があった。歴史遺産もしくは文化財としてよいであろう。しょっちゅう通っているところなのにいまごろ気がつくなんて迂闊な話である。 示されている町名は「上三崎南町」(かみさんさきみなみちょう)」、『日本歴史地…

柳橋

永井荷風ゆかりの地の散歩で久しぶりに柳橋界隈を廻った。ここは新橋、葭町、人形町、新富町などととともに昔の東京を代表する芸者街、かつての風情でいえばかろうじて屋形船にその名残りがうかがわれる。 柳橋と対比されるのが新橋で、荷風は柳橋の上品で、…

2019マルタ共和国

二0一九年十二月にマルタ島を訪れ、それから先はコロナ禍で海外へは行っていませんから、ずいぶん日が経ってしまいましたが、以下はいまのところわたしの最新の海外旅行の記録です。 十二月四日、 成田空港からイスタンブール経由でマルタ共和国に来た。 偶…

2019旅順、大連、錦州(其ノ三)

大連に路面電車が走ったのは一九0九年。営業主体は満鉄が全額出資し分社化した純粋子会社で、実質的に満鉄の軌道、バス部門を担っていた。 日本の敗戦により管轄は大連市交通公司に移行し、一部の路線はトロリーバスへの転換や廃止となったが、いまも大連市…

2019旅順、大連、錦州(其ノ一)

二0一九年六月十四日、成田空港から大連へ向かった。所要時間三時間余り。一九七六年三月にはじめて訪れて以来中国へは何度か来ているが東北地方は今回がはじめてだ。 大連市は日中関係の要衝となった都市で、南満洲鉄道株式会社(満鉄)の本社や関東軍の司…

2019チュニジアの旅(其ノ二)

エル・ジェムは巨大な円形競技場がそびえる街だ。三世紀に建てられたこの遺跡は、現存するもののうち、ローマ、ヴェローナに次ぐ三番目に大きな競技場で、保存状態もたいへんよくて、地下にはグラディエーター(剣闘士)の控え室や入場の道(「死の廊下」と…

年末と「第九」

年末の風物詩にベートーヴェン「交響曲第九番(合唱付き)」があり、わたしもこの季節になるとわが家にある唯一の「第九」、一九五一年バイロイト音楽祭でのフルトヴェングラー指揮によるディスクを取り出して聴くことになる。 年の暮れと第九が結びついたの…

旅の終りに(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十四)

凱旋門の売店で買い物をして、そのあと再びシャンゼリゼ通りをコンコルド広場に向けて散歩した。 「凱旋門ノ正中ヨリ、『シヤンゼルゼー』ノ広衢ヲスキ、其衝当(ツキアタリ)ニ「チュロリー」宮アリ、宮門ノ前ニ、又一場ノ広区ヲ開ケルヲ、『コンゴルト』ノ…

凱旋門上からの眺め(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十三)

サン・ジェルマン・デ・プレからシャンゼリゼ通りへ出た。ルイ・ヴィトンは賑わい、向かい側のキャバレー、リドでは華やかなショー繰り広げられているが時間がなく、シャンゼリゼを散策したあとは凱旋門に上がった。 野上弥生子は『欧米の旅』に、凱旋門上か…

サン・ジェルマン・デ・プレの街角で(オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十二)

サン・ジェルマン・デ・プレはサルトル、ボーヴォワール、ジュリエット・グレコ、ゴダール、トリュフォーたちが集ったパリの文化活動の中心地として知られる。その姿は過去のものとなったが、いまもジャーナリストや演劇人の溜まり場となっているカフェはあ…

サン・ジェルマン・デ・プレ教会(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十一)

「何世紀も前パリがシテ島の城塞都市で、今日のサン=ジェルマン広場では牛が草を食んでいた頃、シテ島の城塞を最初に出た人人の一部がセーヌ左岸沿いに住みついた」。やがて河岸からすこし南をセーヌ川に平行するユシェット通りには配達車、ペダルを踏んで…

サン・ジェルマン・デ・プレ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十)

サン・ジェルマン・デ・プレ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六十) 五十年代末のパリを舞台にした映画「ラウンド・ミッドナイト」はアメリカからやって来た伝説的なジャズ・ミュージシャンとその音楽を愛するフランス人青年との友情を描いた佳篇で…

河岸の古本屋(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十九)

ポンヌフを渡り、サン・ジェエルマン・デ・プレに向かう途中には数軒の古本屋が並んでいる。フランス文学者河盛好蔵先生の名エッセイ集『河岸の古本屋』のもたらすイメージもあり、セーヌ川沿いの古本屋はいかにもパリという気になる。 「自分は中学校で初め…

セーヌ川のクルーズ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十八)

シテ島からポンヌフへ引き返し、クルーズ船に乗った。数年前にパリを散歩したときはモンマルトルに行った関係でクルージングは断念したから、今回ようやくセーヌ川の水上周遊となった。料金は大人ひとり十四ユーロ。渡された半券の裏には次回持参者は一ユー…

シテ島(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十七)

セーヌ川の中州シテ島は「パリ発祥の地」とされ、ノートルダム大聖堂のほかにパリ警視庁や最高裁判所、パリ市民病院などが建つ。並べるとお堅いイメージになるが、ご覧のように昔ながらの市も立っているし、川沿いをジョギングする人も多い。 島へ架橋する橋…

「ノートルダム・ド・パリ」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十六)

一八三一年に刊行されたヴィクトル・ユーゴー『ノートルダム・ド・パリ』はその後、何度か映画化され、ミュージカルとなり、バレエ作品をも生んだ。 わたしがノートルダム大聖堂を知ったのは「ノートルダムのせむし男」という映画だった。中学生のときテレビ…

ノートルダム大聖堂(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十五)

エッフェル塔、凱旋門、ノートルダム大聖堂、いずれもパリの象徴的存在だが、2011年のはじめてのパリ旅行では残念ながら大聖堂を見残した。そこで今回はここを最優先とした次第で、比類のないゴシック建築の隣にはセーヌ川が流れていて、ようやくパリが誇る…

「愛の南京錠」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十四)

地下鉄ポンヌフ駅で降りて地上へ出ると、いつだったかニュースの映像でお目にかかった「カデナ ダムール」(愛の南京錠)を目の当りにした。 「カデナ ダムール」は恋人同士が永遠の愛を誓い、南京錠に二人の名前を書いて欄干の金網に取り付けて鍵をかけ、鍵…

パリ散歩(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十三)

いよいよパリ市内での終日自由行動だ。交通機関に不案内なのでいささか緊張を覚えながらまずはシテ島のノートルダム・ド・パリをめざした。ホテル近くの地下鉄の駅で一日乗車券を購入してポンヌフで降り、そこからセーヌ川に沿って歩いた。 たしかにこの道と…

ブリュッセルからパリへ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十二)

ブリュッセルからパリへは二百九十キロメートル、バスで四時間半の行程だ。夕刻のパリを車窓観光したあとライトの灯るエッフェル塔で下車した。はじめてパリを観光したのが二0一一年だから四年ぶり二度目の「花の都」だ。この日は十月二十四日。翌日はあり…

「鈴懸の径」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五十)

ほんとうに素敵な場所へ案内していただいた。心も身体も洗われる気がしたコロマバラ園だった。ノーマークどころか名前すら知らなかった場所だったから余計うれしかった。 季節外れに近い時期ながら花の魅力は十分感じられたうえ、門前にいたる「鈴懸の径」(…

「花なきバラ」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十九)

おなじく堀口大學の訳詞集『月下の一群』に収める、ルミ・ド・グウルモン「あらしの薔薇」より。 白き薔薇(しょうび)は傷つきぬ 荒ぶ暴風雨(あらし)の手荒さに、 されども花の香はましぬ 暴風雨の手荒さには政治、軍事の要素も含まれているかもしれない…

「ばらの花」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十八)

堀口大學の訳詞集『月下の一群』にレエモン・ラジゲの「ばらの花」がある。 (出来るなら接吻してごらん) お前が接吻したとしても ばらの色は褪せはしないから 微風の手で打たれたので紅い頬をしてゐるのです そよ風に打たれた紅い頬は可憐なバラだ。いっぽ…

コロマバラ園(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十七)

コロマバラ園はブリュッセルの郊外シント・ピータース・レーウという小さな町にある。添乗員の方の大のおすすめだけあって、なるほど素敵な空間だった。 バラの見ごろは六月下旬から七月下旬、秋バラが咲くのは八月下旬から九月上旬。わたしたちがここを訪れ…

シャーロック・パブ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十六)

ベルギー生まれの女性でまず思い出すのは一九二九年五月四日ブリュッセルのイクセルで誕生したオードリー・ヘプバーンだ。戦前はベルギー及びイングランド、オランダに在住経験があり、オランダではナチス占領下のアーネムに住んでいた。 男ではエルキュール…

ホワイトビール(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十五)

ベルギーのビールはバラエティに富んでいて、銘柄数は千を超えているとか。この日のレストランでは白ワインで蒸したムール貝とホワイトビールを注文してみた。 Wikipediaにはホワイトビールについて「ベルギーの白ビールにはコリアンダーやビターオレンジピ…

小便小僧(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十四)

わが故郷高知市のはりまや橋はがっかり観光名所といわれたりする。橋だけ見るとわからないでもないが、ここは安政の昔、竹林寺の僧純信と鋳掛屋の娘お馬との禁断の恋の舞台となったところで、そうした故事来歴を念頭において橋上に立っていただきたいもので…

ガリル・サンチュベール(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十三)

グラン・プラスからつづく商店街ガリル・サンチュベールは一八四七年に完成したヨーロッパ最古のアーケードのひとつで、カフェや有名なチョコレート店、内外の高級ブランド店などがならぶ。ネオ・クラシック様式とネオ・イタリア様式からなる瀟洒な商店街と…

グラン・プラス(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四十二)

ブリュッセルの中心広場グラン・プラスは縦百十メートル、横六十八メートルの長方形の広場で、周囲を王の家(ブリュッセル市立博物館)や市庁舎、ギルドハウスなどいずれも見事な石造りの建物が囲んでいる。一九九八年にユネスコ世界遺産に登録された広場を…