2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

献辞余聞

自身の著書を、友人知人や尊敬する方に贈る際、通例として献辞とともに相手の名前をしるす。ところがときにこの献呈本が古書店に出ていたりする。古本屋廻りの好きな方ならおわかりだろう。わたしも何度かそうした献呈本をみている。 著書を贈ったからとて相…

「藤十郎の戀」

一九三七年(昭和十二年)松竹の若手時代劇スターだった林長二郎は同社を退社し東宝に移籍しました。移籍の原因はいろいろ取沙汰されていますがここでは触れません。いずれにせよ反響は大きく、マスコミは世話になった松竹を裏切った「忘恩の徒」と非難し、…

『古池に蛙は飛び込んだか』

長年にわたり気になっていた長谷川櫂『古池に蛙は飛び込んだか』(中公文庫)をようやく読んだ。元版の花神社刊単行本は二00五年の出版だからすくなく見積もっても気がかりは十年あまりにわたっている。そして遅まきながら読んでよかったと思ういっぽうで…

「上海バンスキング」 南里文雄を聴いた!

佐々木康監督「蛍の光」と「純情二重奏」をみた。いずれも初見で、前者は昭和十三年、後者は翌十四年の松竹作品。 「蛍の光」は女学校の生徒に高杉早苗、高峰三枝子、先生に桑野通子というキャスト、女性映画の松竹の面目躍如である。わずかなシーンながら女…

「告白、あるいは完璧な弁護」~旨みのある韓流サスペンス&ミステリー

「告白、あるいは完璧な弁護」(監督、脚本ユン・ジョンソク)は全編サスペンスとミステリーの旨みが味わえる出色の韓流作品でした。一時間四十五分にわたり味覚をそそられたあとは心地よさを伴いつつもいささか疲れを覚えたほどでした。 ホテルの一室で若い…

鷲津毅堂の碑とお墓

永井荷風の母方の祖父鷲津毅堂の碑と墓へ行ってきました。 まずは隅田川にかかる白鬚橋を渡り、石碑が建つ白髭神社へ。 毅堂鷲津宣光(1825-1882)は尾張藩の儒者で、維新後は明治政府に仕え、登米県権知事、司法判事、司法少書記などの要職を歴任、東京学士…