2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

無用の人 雑感

「竹林に賢人面や春の暮」(藤田湘子)。 この句に寄せて江國滋が「近年、日本でもむやみやたらに『賢人会議』なるものが催されている。名づけるやつも名づけるやつだが、そんなネーミングの会議に、はずかしげもなくのこのこ出かけていく"賢人諸氏"に対する…

不要不急の外出を控える日をまえに

危機管理の要諦ははじめにドーンと大きく厳しい網をかけて、改善したところから緩めることにある。小池東京都知事はこの週末二十八日と二十九日に不要不急の外出を控えるよう都民に要請した。大きく厳しい網である。 次が個々の問題で、わたしのばあいだと日…

「レ・ミゼラブル」

ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』で、ジャン・ヴァルジャンはモントルイユにある彼の工場で働いていた女工が売春婦となり、病に倒れたのを知り、他家に預けてある彼女の娘を連れ帰ろうとする。ヴァルジャンは娘のいるモンフェルメイユに赴くところで、…

東京五輪と歴史の教訓

東京オリンピックは予定通りの開催に向けてしっかり準備をする。IOCバッハ会長や東京五輪大会組織委員会森会長、安倍首相、小池東京都知事からはそうした発言しか聞こえてこない。感染症が収まり七月二十四日に開会式を迎えられればそれに越したことはない。…

「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」

もう商売をやめて店を畳もうかと思案する孤独な老美術商オラヴィ(ヘイッキ・ノウシアイネン)がある日のオークションで惹かれた一枚の肖像画。画家のサインはなく、モデルがだれかもわからないから商品としてはリスキーすぎるが、魅力には抗しがたくあきら…

「ジュディ 虹の彼方に」

「オズの魔法使い」(一九三九年)やミッキー・ルーニーとのコンビでミュージカル映画に出演していたころの回想とともに描かれたジュディ・ガーランドの晩年、ロンドンでの日々。 彼女が四十七歳で歿したのは一九六九年六月二十二日、当時大学一年だったわた…

「黒い司法 0%からの奇跡」

ハーパー・リーの自伝的小説『アラバマ物語』は一九六0年に発表され、翌年ピューリツア賞を受賞、その翌年には映画化され、原作、映画ともに大きな話題を呼んだ。映画のほうもアカデミー賞主演男優賞(グレゴリー・ペック)脚色賞、美術賞に輝いた。 厳しい…

黒船来航から新型コロナウイルスまで

ペリーの黒船が来航したのは嘉永三年(一八五0年)のことだった。その三年前、米国はオランダに日本との通商について仲介を依頼していて、オランダはこれを断ったうえで徳川幕府に知らせ、その後もアメリカ側から得た情報を伝えていた。 これに先立つ天保十…