摂生と不摂生

八月二十日新型コロナの四回目の接種をした。場所は文京区シビックセンターの展望ラウンジのある二十五階で、接種はいやだがラウンジからの眺めはよい付加価値である。 接種後十五分は事後観察があり、それが済むとエレベーターで一階へ下りた。とちゅう同世…

「梨泰院クラス」讃

英語学習テキストOXFORD BOOKWORMSでチャールズ・ディケンズ『デイヴィッド・コパーフィールド』を読み、引き続き岩波文庫の訳書全五巻に進み、第一巻を読み終えた。学習用テキストのおかげで呑み込みも早く快調に進んでいる。 OXFORD BOOKWORMSでは次にトー…

「アキラとあきら」

映画を観て、翌日から三日かけてTVドラマ版をNetflixで視聴しました。 映画だけではよく理解できなかったから、というのではありません、念のため。こういうオモシロ作品のあとにTV版をパスするなんてわたしにはできません。 両者の異同は別にして、どちらも…

ドナルド・キーンさんの長生きの秘訣

日本をこよなく愛した文学者ドナルド・キーンさんは東日本大震災を機に、それまでのニューヨークと東京に半年交替で住む生活から日本永住を決意し、日本国籍を取得した。心不全により亡くなったのは二0一九年二月二十四日、九十六歳だった。 キーンさんの眼…

フランス的ケチ

イギリス人がコンドームのことを俗語で「フランスの手紙」というのはよく知られている。英仏両国の不仲から生まれたことばで、反対にフランスでは「イギリスのレインコート」といっているそうだからこれでおあいこ。 フランス人は世界に冠たる倹約家、始末屋…

ケチ作戦

原油価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻が世界経済ひいては家計に大きな影響を及ぼしている。電気・ガス料金、お菓子類をふくむ食料品、各種サービス料金などなど値上げラッシュの様相だ。 わたしは下流の年金生活者だからサバイバル術の必要度は高いが、か…

夏季鍛錬余話

『 シャーロック・ホームズの冒険』で「ボヘミアの醜聞」につづく第二話「赤毛組合」の事件を解決したホームズは、退屈しのぎになったといささか満足したのもつかのま「おやおや、その退屈が早くもぶりかえしてきたぞ!思うにぼくの一生というものは、平々凡…

夏季鍛錬

アイルランドでは勤務の週四日制が広がりつつあり公的な実証実験も行われていると、NHKBSの国際ニュースが特集で報じていた。実験はアメリカ、イギリス、オーストラリアでも予定されていて、背景にはたくさんの報酬より自分の時間を大切にしたいという意識の…

吉田茂国葬の日

「殺人を無罪にする方法」(Netflix)シーズン1は法廷ドラマとミステリーをひとつにした興味深い内容だったがすべてを視聴するとなると6シーズン、90エピソードにのぼる。隠居とはいってもこれを全篇見るのはきつくシーズン1で終えることとした。あえて難を…

七十七回目の「八月十五日」に

昭和戦前の外交史は英米協調派が日独伊三国同盟派に押され、敗北する道筋をたどった。すなわち太平洋戦争への道である。 英米との協調を志向しながら敗れた人たちについては吉田茂が『回想十年』で「私が接した重臣層をはじめ、政治上層部の誰もがこの戦争に…

立秋の日に

東京では六月二十五日から九日連続で猛暑日となった。これまでいちばん長い猛暑日で 、長期予報によればことしの夏は長く、酷暑の日が多いそうだからまだまだ熱中症に警戒しなければならない。 そうしたなか暦のうえでは八月七日に立秋の日を迎えた。暦上の…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ五)~抗争と盃外交のはざまで

「仁義なき戦い」では、縄張り争い、跡目争い、盃外交の新たな展開などにより、ヤクザ内部およびその周辺の人間関係は激しく変化する。そうしてとりあえず保たれていた仁義や盃による秩序が「擬制の終焉」を迎える。 この変化は激しく深作欽二、笠原和夫のコ…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ四)~ほんのはなし

わたしがこれまでに読んだ映画の本のワン・オブ・ベストに『われわれはなぜ映画館にいるのか』がある。一九七五年に晶文社から刊行され、のち再編改題され『映画を夢見て』(筑摩書房)、さらに改編されて『新編われわれはなぜ映画館にいるのか』が二0一三…

与える信者、受ける教団

七月八日、安倍晋三元首相を暗殺した男の母親は、入信した宗教団体に一億円の寄付をしていたと報じられている。そのため家庭は大混乱に陥り、親戚が交渉して半分は取り返したと聞くけれど、どちらにしても常軌を逸している点で変わりはない。 宗教団体と寄付…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ三)~日下部五朗『シネマの極道』をめぐって

二0一三年「仁義なき戦い」四十周年に合わせるように日下部五朗『シネマの極道 映画プロデューサー一代』(新潮社)が刊行された。全五部作の企画製作は第一部のみ俊藤浩滋(藤純子、現、富司純子の父君)、日下部五朗の連名で、あとは日下部五朗プロデュー…

「モガディシュ 脱出までの14日間」

実話をもとにした作品です。朝鮮半島でどれほど広く知られている話なのかはわかりませんが、こんな出来事があったなんて、わたしには驚きの現代史秘話でした。 一九九0年ソウルオリンピックを成功させた韓国は余勢を駆って国連参加を目途にアフリカ諸国との…

あじさい、ひまわり、ライラック

六時に起床しラジオのニュース、天気予報を聞き、洗顔、歯磨き、そうしてストレッチ、筋トレ、ジョギング、シャワーのあと食事をしながらNHKBS1の国際ニュースを見るのが朝の日課だが、ロシアによる侵攻で、ウクライナの惨状が気の毒なうえにプーチンやラブ…

「ベイビー・ブローカー」

「ベイビー・ブローカー」を観たあと、スタバでコーヒーを飲みながらソウルやプサンの街角を思ったり、「万引き家族」と本作を併せて是枝裕和監督の家族についての問題意識を考えたりしていました。 ひと段落したところで映画のあとのお酒とおつまみを想い、…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ二)~NHKへの疑問

映画の公開四十年を期して二0一三年に発売された「仁義なき戦い Blu-ray Box」が手許にある。これには本篇全五部作にくわえ特典として「総集編」と「“仁義なき戦い”を作った男たち」が収められている。後者は深作欣二、笠原和夫両氏の没後二00三年五月三…

「三姉妹」

第一感、脚本が光っていました。特筆すべきは姉妹三人のキャラクター造形で、次女役のムン・ソリが脚本に感銘を受け、共同プロデュースを買って出たというのも納得です。三人の人物像を具体化したキム・ソニョン(長女)、ムン・ソリ、チャン・ユンジュ(三…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ一)~広島埠頭での思い出

「仁義なき戦い」の公開は一九七三年(昭和四十八年)一月十三日だからはやいもので半世紀近くが過ぎた。 大学卒業を前にしたころ、ある友人が興奮気味に「詰めた小指の先がどこかへ飛んで、見るとニワトリが嘴で突っついて大笑い」と話すのを聞き、さっそく…

昔も今も

ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』は一九三0年代末に発生した干ばつと砂嵐をきっかけに農業の機械化を進める資本家たちと、土地を追われカリフォルニアに移っていった貧困農民層との対立を素材とした小説で、三0年代アメリカ文学の屈指の作品が刊行さ…

「牛泥棒」

五月二十日にNHKBSPで「牛泥棒」の放送があり、十年ほど前にレンタルショップで借りて以来の再会ができました。 太平洋戦争のさなか一九四三年の作品でわが国では劇場公開されていません。わたしがこの作品を知ったのは若き日のクリント・イーストウッドが感…

水色の季節に

暇も退屈も好きだから國分功一郎『暇と退屈の倫理学』はまえから気になっていて、さきごろ新潮文庫に入ったのでさっそく手にした。評判通りおもしろく、哲学者、思想家がこんなに暇と退屈を論じていたのかと驚いた。 佐藤春夫に名著『退屈読本』がある。著者…

「今屁虎」

永井荷風は『断腸亭日乗』昭和十六年三月二十四日の記事で、ヒトラーに「猅虎」の漢字をあてた。中国語ではふつう「希特勒」(xitela)とするが、わたしは荷風の感情を込めた表記が好き。 そこでプーチンである。中国語では「普京」(pujing)だが、これでは…

『S S将校のアームチェア』〜「普通のナチ」の実像

ダニエル・リー『S S将校のアームチェア』を読み、まだ一年の半分も経っていないのにもうことしの歴史・ノンフィクション系のわがベスト作品となるだろうと予感している。同書は二0二一年十一月にみすず書房から庭田よう子氏の訳で刊行されており、原書THE …

「流浪の月」

小児性愛者にして誘拐犯とされた十九歳の大学生、そして事件の被害者とされた小学五年生の女児。「〜とされた」というのはあくまで世間の視線、また法律の世界における扱いであって、この事件の当事者には人知れない事情がありました。 帰宅したくない家内更…

日本の牡丹はロシアでは咲かない

昨年英語の辞書を紙から電子に変えたところ、なかに語学学習用のテキストとして「OXFORD BOOKWORMS」という読物群が収められていた。難易度で六段階に分けられており、いまようやくレベル3まで来た。 内容はアンネ・フランク、ガンジー、ジョン・F・ケネデ…

今戸橋

浅草の山谷堀公園を散歩した。ここには山谷堀に架かっていた今戸橋の欄干が遺されてある。橋は昭和の記念碑、というのも竣工したのが一九二六年 (大正十五年) 、山谷堀が埋め立てられたために役割を終えたのが一九八七年(昭和六十二年)だったからまさし…

叙 勲

令和四年春の叙勲が四月二十九日に発令され、なかに旭日大綬章を受章した田中直紀、田中真紀子ご夫妻の名前が見えていた。政治家の受章は政治利用を防止する観点からだろう、以後選挙に立候補しないことを条件としているから受章は政界引退の記念でもある。 …