遅船庵筆記

麻生太郎氏における民度の研究

六月四日の参院財政金融委員会で麻生副総理兼財務大臣が日本の新型コロナウイルスによる死者数が欧米諸国より少ない理由を「国民の民度のレベルが違う」と述べたと報じられている。 札幌医科大の調査によると、四日時点の人口百万人当たりの死者数は、日本は…

浮雲の思い

東日本大震災のときもそうだったが現在の新型コロナウイルス感染症禍においても、わたしがすぐに 手にしたのは『方丈記』だった。自身にとって天変地異について思い、考えるテキストとしてこれ以上の書はなく、今回何度目かの通読ではとりわけ「浮雲の思ひ」…

時代と訓辞

新型コロナ感染症が拡大するなか新しい年度がはじまった。本来なら企業、官庁では新たにくわわるメンバーが一堂に会し、トップから辞令が交付され、訓辞で新人としての心得が説かれるのが、この春はネットで訓辞が配信されたり、セクション別に辞令の交付だ…

東京五輪延期狂想曲

東京五輪について国際オリンピック委員会(IOC)、日本側ともに予定通りの開催を繰り返し強調していたのに、各国オリンピック委員会や競技団体、選手から延期を求める声の噴出をうけて急遽三月二十四日、一年程度の延期と決まった。 三日前の三月二十一日、…

不要不急の外出を控える日をまえに

危機管理の要諦ははじめにドーンと大きく厳しい網をかけて、改善したところから緩めることにある。小池東京都知事はこの週末二十八日と二十九日に不要不急の外出を控えるよう都民に要請した。大きく厳しい網である。 次が個々の問題で、わたしのばあいだと日…

東京五輪と歴史の教訓

東京オリンピックは予定通りの開催に向けてしっかり準備をする。IOCバッハ会長や東京五輪大会組織委員会森会長、安倍首相、小池東京都知事からはそうした発言しか聞こえてこない。感染症が収まり七月二十四日に開会式を迎えられればそれに越したことはない。…

黒船来航から新型コロナウイルスまで

ペリーの黒船が来航したのは嘉永三年(一八五0年)のことだった。その三年前、米国はオランダに日本との通商について仲介を依頼していて、オランダはこれを断ったうえで徳川幕府に知らせ、その後もアメリカ側から得た情報を伝えていた。 これに先立つ天保十…

武漢の医師の死

中国が新型肺炎を公表するまえからメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」を通じて危険性を訴えていたのに「デマ」として公安当局に処分された武漢市中心医院の眼科医師李文亮さんがみずからも新型コロナウイルスに罹り二月七日未明に亡くなったという…

カルロス・ゴーンの逃亡

年始のNHKラジオのニュースで、カルロス・ゴーンのレバノンへの入国について、同国の著名なジャーナリストが、カネと力とコネをもつ特別な人に政府が特別な措置を与えているのは政治への信頼を揺るがせ、人心にも悪影響をもたらす、と訴えていると報じていた…

熱情のゆくえ

人の熱情がどんなふうに推移するかについて、はじめは足元、つぎに身体の中ほどへ行き、そしてのど元へとたどり着いて、ここを最後の休憩場所とするという説がある。 二本足ですっくと立ち、身体の中ほどを核とする精力は快楽を求め続け、やがて精力減退の時…

「十二月八日」のあとさき

一九四一年十二月八日からことしで七十八年が経つ。いつだったか、どなたかが、いまの日本の雰囲気を七十八年前の十二月八日のまえに似ていると語っていた。そのときはいくらなんでも心配のし過ぎだろうと思って気に留めなかったが、先日、堀田善衛の自伝小…

山車と神輿

自宅が近い根津神社はこの時期、例大祭で賑わう。山王祭、神田祭とともに「江戸三大祭り」のひとつで、ことしは九月二十一、二十二の両日、町会では神輿を繰り出し、境内にはたくさんの露店が並んだ。 神社のホームページには、六代将軍家宣は幕制をもって当…

アクセルとブレーキ

ことし四月、東京、池袋で旧通産省工業技術院の元院長、八十七歳が運転する乗用車が暴走し、母子が死亡、十人が負傷した痛ましい事故があった。車を分析した結果ではアクセルを踏み込んだ形跡はあったがブレーキを踏んだ跡は残っていなかった。アクセルをブ…

日産動物園

日産自動車の西川広人社長(九月十六日付で辞任)は副社長だった二0一三年五月に株価があらかじめ決められた水準を超えたときに権利行使できる「ストック・アプリシエーション権(SAR)」という権利の行使日をズルして一週間遅らせ、およそ四七00万円多く…

芸能人の不祥事

新井浩文が強制性交容疑で逮捕されたのは二月一日のことで、映画についていえば六月に公開が予定されていた「台風家族」は延期に、おなじく年内公開予定だった「善悪の屑」は公開中止と決まった。前者では脇を固める一人として出演していて、どう処理するの…

政治家の失言

塚田一郎国土交通省副大臣が四月一日、福岡県北九州市で行われた集会で、下関北九州道路構想が本年度から国による直轄調査となったことについて「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言し、現職副大臣による公正さを欠いた利益誘導発言として…

「行ってまいります」「申し訳ございません」

新学期がはじまった。わが家は小学校に近く、学校のある日は大通りの信号に交通指導員の方が立ち、横断歩道を渡る小学生に「行ってらっしゃい」と声をかけると子供たちは「行ってきます」と元気な声を返している。 わたしがジョギングを終えて自宅に帰ってく…

勧められた本

アラビア語原典から訳出した東洋文庫版『アラビアンナイト』は畏れ多くて手を出せなかったものの、ちくま文庫のバートン版はいっとき書架を飾っていて、結果は、二巻目で断念し、手放した。 苦い思い出の『アラビアンナイト』だが、古書店の均一本の棚に阿刀…

複雑面妖

日本の、いや世界の映画史上最高のアクション場面はと問われたなら、わたしは「七人の侍」の豪雨のなかでの乱闘をあげる。のちに「裸の大将」や「黒い画集・あるサラリーマンの証言」など数多くの映画、テレビ番組で監督、演出を務めた堀川弘通はこのとき助…

情とカネ

火災保険のなかった江戸時代には、問屋と小売店との関係は密接で、どちらかが火災にあうと、災禍を免れたほうが親身になって面倒をみたという。相互扶助と火災保険の合わせ技であるが、のちに保険業者が現れると問屋と小売店の紐帯はだいぶんゆるんでしまっ…

裏急後重

むかし東大英文科のなんとかという教授はたいへんな記憶力の持ち主だったが弱点がひとつあって植物の名に疎かった。 教室で英語のテキストに植物名が出て、日本語で何というのかわからない場面、しかしこの先生、慌てず騒がず、かといって辞書を引くのでもな…

旅と長命

「月を笠に着て遊ばゞや旅の空」。 作者の菊舎は江戸後期の俳人で、二十四歳のとき夫と死別、二十九歳で剃髪し『奥の細道』を逆コースでたどる最初の大旅行に出て、その後生涯を旅に明け暮れ、七十四歳で歿した。 上の句は二十八歳で旅立ちを決意したときの…

近況記事

Twitterをみていると、SNSの更新が止まっている知人三名のことが気になって、知人の知人に「いまどうされているのか」を訊いてみたら、そのうちふたりが今年の夏に亡くなっていて、SNS(ソーシャルネットワークサービス)の突然の更新停止は「なにかある」と…

口腹の楽しみ

ちかごろは筍が出盛りで供養が安上がりにできるから、いまのうちに死にたいと念じている病気の婆さんがいて、いっぽうに、筍が安いうちに娘を嫁にやり、格安で結婚式をすませたいと願う倹約家がいる。 いずれも薄田泣菫『茶話』にあるエピソードで、むかしは…

「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」。 この秋、はじめて柿を食べた。鰻の蒲焼と聞くと斎藤茂吉を思い出すように、柿となれば正岡子規だ。そこで夏井いつき『子規365日』を開いてみたところ十月八日と九日と続けて柿の句があった。 「句を閲すラムプの下や柿…

小学生のときに見たプロ野球

この九月に刊行された芝山幹郎『スポーツ映画トップ100』(文春新書)の書き出しに、著者が子供のころ目にした野球選手の思い出が語られていた。 芝山氏は一九四八年(昭和二十三年)石川県金沢市の生まれで、兼六園球場で青田昇、引地信之、箱田淳を、神戸…

菊人形

十月になり、自宅近くの団子坂を上り下りしていると、菊人形のことが思い浮かぶ。 文化文政年間に巣鴨、染井、白山の植木職人が手慰みに菊を衣に人形に着せた菊細工が起こりで、これが安政年間に駒込団子坂に移り、明治七八年ころから木戸銭を取って客に見せ…

猫の恋、亀の声

桜の開花が待たれるころ猫は恋の季節を迎える。猫が交尾する時期は年に四回あるそうだが、いちばん盛んなのは早春で、発情した雄は昼夜を問わず鳴き声もかまびすしく雌を追い求め、雄どうしの争いの激しいばあいは武闘が起こる。こうして「猫の恋」は春の季…

「排除の論理」余話

昨年の衆議院議員選挙に際して朝日新聞が「安保法今は昔」の見出しとともに民進党から希望の党へ転じた何人かの議員をとりあげていた。 集団的自衛権を認める、自衛隊の活動範囲や使用できる武器を拡大するといった内容を盛り込んだ通称、平和安全法制整備法…

「排除の論理」

昨年の衆議院議員選挙で、希望の党が安倍政権の存続を脅かすかもしれないと注目を集めながら当時党代表だった小池百合子東京都知事の「排除」発言を機に急速に勢いが衰えたのは記憶に新しい。民進党の前原誠司代表は、希望の党にまるごと合流する意向だった…