2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」。 この秋、はじめて柿を食べた。鰻の蒲焼と聞くと斎藤茂吉を思い出すように、柿となれば正岡子規だ。そこで夏井いつき『子規365日』を開いてみたところ十月八日と九日と続けて柿の句があった。 「句を閲すラムプの下や柿…

『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』

時を忘れて没頭し、頁を繰る指に力がはいる。至福の読書であり、もしもこれがミステリーであればわたしはもうひとつスピード感をくわえよう。 例外を認めたうえであえて言う、しばしば滞って軽快に運ばないミステリーは困ったものだ。その点でA・J・フィン『…

小学生のときに見たプロ野球

この九月に刊行された芝山幹郎『スポーツ映画トップ100』(文春新書)の書き出しに、著者が子供のころ目にした野球選手の思い出が語られていた。 芝山氏は一九四八年(昭和二十三年)石川県金沢市の生まれで、兼六園球場で青田昇、引地信之、箱田淳を、神戸…

旅の終りに(2016晩秋のバルカン 其ノ五十六)

スロベニアのポストイナからクロアチアのザグレブに戻り、翌日(2016/11/25)の午後ザグレブ国際空港からミュンヘン経由で帰国した。 空港行きのバスが出る直前までザグレブ郊外にあるホテルの近くを散歩し、おしゃれなカフェを見つけて憩いのときを過ごした…

ポストイナ鍾乳洞(2016晩秋のバルカン 其ノ五十五)

今回の旅の最後の観光地はスロベニアのポストイナ近郊にある鍾乳洞。スロベニアは国土の半分近くが石灰岩でできたカルスト台地となっていて多くの洞窟があるが、なかでも有名なのがポストイナ鍾乳洞だ。 一八一八年、当時オーストリアの皇太子だったフェルデ…

台風24号の翌朝に

日本列島を縦断した台風24号。東京では九月三十日から翌日未明にかけて暴風が吹き荒れた。十月一日の朝は快晴で、いつものように上野公園を走ったところ、不忍池のほとりや桜並木でけっこう大きな樹が折れていて風の強さに驚いた。スマホを持って走る習慣が…

聖マリア教会(2016晩秋のバルカン 其ノ五十四)

ブレッド湖には小さな島ブレッド島が浮かぶ。スロベニア唯一の自然の島で、ここに建つのが聖マリア教会(聖母被昇天教会)だ。フランスの有名な観光地モン・サン=ミシェルは未体験だが、あるブログに、朝靄にかすむブレッド島の聖マリア教会はモン・サン=…

湖に船を浮かべて(2016晩秋のバルカン 其ノ五十三)

ブレッド城に登り湖畔を一望したあと湖で船に乗った。淡い霧のなかをゆっくりとボートが進んで行く。行き先は聖マリア教会だ。 『死都ブリュージュ』で知られるベルギーの象徴派を代表する作家、詩人のローデンバックに『霧の紡ぎ車』という短篇集があり、こ…