2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「日日是好日」

小津安二郎は、物語じゃなくて随筆みたいなものを映画にしたいとよく語っていたそうだ。「おれは黒澤明君みたいにオクターブは高くない」とも。 オクターブの高い波乱万丈の物語を語る映画と、ありきたりのドラマティックは追及せず、日常生活のなかで生じた…

ブレッド湖の朝(2016晩秋のバルカン 其ノ五十二)

クロアチアの首都ザグレブからスロベニアの代表的観光地ブレッド湖へ。およそ二百キロの行程だ。ホテルに着いたのは夜もだいぶん更けていたのでその光景はわからなかったが、朝起きて一望したとたん静寂なたたずまいの美しさにおどろいた。まるで幻想の世界…

夕景(2016晩秋のバルカン 其ノ五十一)

ザグレブのアッパータウンである旧市街とダウンタウンの新市街をつなぐ交通機関がケーブルカー「ウスピニャチャ」だ。開設されたのが一八九0年、距離は六十六メートル、片道三十秒で到着する世界一短いケーブルカー、そしておそらく世界最短の公共交通機関…

菊人形

十月になり、自宅近くの団子坂を上り下りしていると、菊人形のことが思い浮かぶ。 文化文政年間に巣鴨、染井、白山の植木職人が手慰みに菊を衣に人形に着せた菊細工が起こりで、これが安政年間に駒込団子坂に移り、明治七八年ころから木戸銭を取って客に見せ…

ザグレブ大聖堂(2016晩秋のバルカン 其ノ五十)

聖母被昇天大聖堂とも呼ばれるザグレブ大聖堂はクロアチアのカトリック教会の中心、また旧市街を代表する建築物だ。聖母被昇天は聖母マリアがその人生の終りに肉体と霊魂を伴って天国に召されたという信仰にもとづいている。 一0九四年に建設がはじまり、一…

市松模様のTシャツ(2016晩秋のバルカン 其ノ四十九)

聖マルコ教会の屋根は赤、白、青のタイルによるモザイク模様でデザインされている。赤白青はクロアチア国旗の横縞三色となっており、その中央には赤と白の国章がある。国章は赤と白の市松模様で、一九九一年の独立以来このデザインの国旗が用いられている。 …

聖マルコ教会(2016晩秋のバルカン 其ノ四十八)

ザグレブ旧市街の中心にある聖マルコ広場に面した聖マルコ教会。 広場には国会議事堂、首相官邸、最高裁判所という国権の最高機関があり国葬など重要行事はこの教会で行われる。 屋根の赤、白、青の陶板を用いたモザイク模様がおしゃれで美しい。赤は内陸部…

ザグレブ(2016晩秋のバルカン 其ノ四十七)

プリトヴィッツェ湖群国立公園をあとにクロアチア共和国の首都ザグレブへ。ここはアドリア海から百三十キロほど内陸に入ったところにある。アドリア海、アルプス、ディナルアルプスへと広がるパンノニア平原南西部に位置していて、沿海地方と中央ヨーロッパ…

「LBJケネディの意志を継いだ男」

一九六三年十一月二十二日金曜日、現地時間十二時三十分、第三十五代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディはテキサス州ダラス市内をパレード中に狙撃され、死亡した。 事件の一報が日本に届いたのは十一月二十三日午前四時ごろで、この日、日米間初の衛…

プリトヴィッツェ湖群事件(晩秋のバルカン 其ノ四十六)

美しく静かなみずうみのほとりを散策したあとは船を浮かべて周遊した。思ってもみなかった贅沢なひとときだった。 プリトヴィッツェ湖群が観光地として知られるようになったのは十九世紀の後半で、ホテルが建設され、ヨーロッパ全土からの観光客でにぎわった…

心地よさ、荘厳、すがすがしさ(2016晩秋のバルカン 其ノ四十五)

O・ヘンリーに、別れたままになっていた父娘の絆をテーマとする「水車のある教会」という短篇小説がある。 アトランタで暮らしてきたチェスター嬢にとってカンバーランド地方の雄大な自然と変化に富む地形はめずらしく、大いに心惹かれた。水車のある教会が…

清冽(2016晩秋のバルカン 其ノ四十四)

ネット上のプリトヴィッツェ湖群国立公園口コミガイドのひとつに、当日は生憎の雨、気温は低く、歩道は滑り、道はぬかるんだ、絶景ハイキングルートはどこ!と書かれていた。この方には申しわけないけれど、天気のよい日に訪れることができてじつにありがた…

プリトヴィッツェ湖群国立公園(2016晩秋のバルカン 其ノ四十三)

さわやかな晩秋の一日、プリトヴィッツェ湖群国立公園をあるいた。ほとんど予習なしの旅だからクロアチアでハイキングができるとは思いもよらず、うれしいおどろきだった。クロアチア旅行をブームとしたひとつにこの公園があるそうで、同国の重要な観光資源…

聖ヤコブ大聖堂(2016晩秋のバルカン 其ノ四十二)

シベニクの旧市街には二十八もの教会が建っている。なかでシベニク司教座が置かれているのが聖ヤコブ大聖堂で、レンガや木を補助材として用いない石造の教会としてよく知られている。世界で最も大きな石造教会は二000年にユネスコ世界文化遺産に登録され…

池井戸潤の小説に拍手!

第一次世界大戦後のドイツでは、敗戦は善が悪に浸食され、凌駕されたためだったとの議論があり、国家を内部から崩壊に導いた諸悪への批判が行われた。健康のために煙草と酒を控え、適度な運動をせよとのキャンペーンもそのひとつで、酒も煙草も嗜まない菜食…

シベニク(2016晩秋のバルカン 其ノ四十一)

アドリア海東岸に位置するシベニクは美しい港町だった。紺碧の海と赤褐色の家並みが素敵な港町はアドリア海東岸では最古の都市である。ダルマチア地方の中央に位置していて、クルカ川がアドリア海に流れ込んでいる。 ダルマチアの多くの町とおなじくヴェネツ…

聖ロブロ大聖堂の鐘楼で(2016晩秋のバルカン 其ノ四十)

一九九七年、アドリア海に浮かぶ要塞の島は古都トロギールとして世界遺産に登録された。ディオクレティアヌス宮殿のあるスプリトから西へ三十キロ足らず、日帰りのできる人気の観光スポットだ。この街のランドマークが聖ロブロ大聖堂の鐘楼で、ここから紺碧…