2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石と相撲

『近代作家追悼文集成[25]寺田寅彦』(ゆまに書房平成四年)に収める鈴木三重吉「寺田さんの作篇」に、ある日夏目先生のところへ伺うと、先生は「今寺田が帰つたところだがね、僕がアインシュタインの原理といふのは大体どういふことかねと聞いたら、それ…

三楽

幕末、越前国の国学者、歌人橘曙覧(たちばなあけみ)の「独楽吟」は「たのしみは艸のいほりの筵敷きひとりこころを静めをるとき」にはじまる五十二首の連作で「たのしみは~とき」という型で繰り返される。 「たのしみは妻子むつまじくうちつどひ頭ならべて…

平山周吉『小津安二郎』

はじめて平山周吉という活字を目にしたときは本名かペンネームか知らなかった。ペンネームだと映画「東京物語」で笠智衆の役名をそのまま用いたのだからおもしろいワザを使ったものだと感心したが、ちょいと胡散臭さも感じた。 いまはペンネームと知っている…

固唾を呑んで観た「ゴールド・ボーイ」

「ゴールド・ボーイ」を観ているうちに「仁義なき戦い」は撮影中ヒット間違いなしとさっそく会社は第二作の準備をしていたという話を思い出しました。そしてこの作品も続作があって然るべきだと確信しました。何回か固唾を呑んだあとのラストシーン、ここで…

「戦前の昭和史 雑感」補遺

星新一『明治の人物誌』は中村正直から杉山茂丸まで十人の生涯、事績に人物論を加味したコンパクトな評伝だが、いずれも作者の父で星製薬の創業者、星薬科大学の設立者である星一(1873-1951)がなんらかのかたちで関わりをもった人たちで、マクロな目で見た…

戦前の昭和史 雑感

昨年(二0二三年)八月に草思社から上梓された平山周吉『昭和史百冊』(草思社)を読んだ。百は多数の意で、書評や言及、紹介されている本は有名無名、古典的なものから最新の研究成果を問わず四百冊を超えている。大まかに年代別、テーマ別に編集されてい…