日記から

東京マラソン2024

三月三日。東京マラソン2024を走り、なんとかフィニッシュできた。 一月末に風邪をひいて腹具合が悪く、ようやくよくなったと思ったら次には喉にきて鼻水、咳が出るようになり、風邪が抜け切るのを待ってトレーニングを再開したものの肝心の距離を延ばす練習…

漱石と相撲

『近代作家追悼文集成[25]寺田寅彦』(ゆまに書房平成四年)に収める鈴木三重吉「寺田さんの作篇」に、ある日夏目先生のところへ伺うと、先生は「今寺田が帰つたところだがね、僕がアインシュタインの原理といふのは大体どういふことかねと聞いたら、それ…

はじめての菊池寛

一月一日。 内田百閒に小学生のころのお正月の思い出を語った「初日の光」という随筆がある。 百閒は一八八九年(明治二十二年)の生まれで、当時尋常小学校の生徒たちはお正月に登校して「一月一日」(作詞:千家尊福、作曲上 真行)という唱歌を歌った。 …

『猫』とフィルム・ノワール

十二月三日。昨日スマホの機種変更をした。iPadやKindleなどと充電の端子を一本化したのはよかったが、旧機種からデータを移行しなければならず、手引の小冊子をいただいたが緊張感ただならず、心配した通りきょうの日曜日は午後のラグビー早明戦の時間帯を…

三代目柳家小さん 讃

パレスチナのガザ地区を支配するハマスがイスラエルを奇襲攻撃したのは先月十月七日だったからまもなくひと月になる。ミサイルをイスラエルにぶち込んだ。それにはこれまでの経緯があり、空は見えても牢獄状態にあるガザ地区のいまがあってのことだろう。 そ…

明鏡止水

宋の李瀆素という人、酒を好み人が節酒を忠告すると、養生にはこれが一番、好きな物を飲んで余生を送るなんて楽しいではありませんかと答えた。 艾子が飲み過ぎて吐いた。門人たちは師の酒を諌めようと豚の腸を吐きものに混ぜて五臓の一つが欠け四臓になって…

東京レガシーハーフ2023

ビヤホールでの飲み会でジャニーズ事務所のことが話題になり、恥ずかしながらめずらしく吼えた。会社の先代社長の極悪非道はわかっているが、それを反省し改革に踏み出そうとしている東山やイノッチという人にビール屋のオヤジがやれ社名を変更せよとか所属…

ラグビーW杯フランス大会開幕

九月四日。ダナン空港を発ち無事成田に到着。往復の航空機では読書スランプながらほかにすることもないので若山牧水の歌集と随筆を読んだというより眺めていた。なかの一首。 人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ これと似た、ウィスキ…

都心猛暑日過去最多

クエンティン・タランティーノ『その昔、ハリウッドで』(文藝春秋)を読んでいる。映画のノヴェライゼーションとのことだが、スクリーンにはなかった映画談義がどどーんとぶち込まれていて、楽しさ満載、ずいぶんとお得感がある。田口俊樹氏の訳筆も大いに…

ホームズまみれの日々

語学学習用にリライトされたシャーロック・ホームズ短篇のアンソロジーを終えたので、いよいよコナン・ドイルの原文に進んだ。とはいえ一人立ちはまだ難しくまずは柴田元幸、西村義樹、森田修の先生方による『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』に取り組…

「上海バンスキング」 南里文雄を聴いた!

佐々木康監督「蛍の光」と「純情二重奏」をみた。いずれも初見で、前者は昭和十三年、後者は翌十四年の松竹作品。 「蛍の光」は女学校の生徒に高杉早苗、高峰三枝子、先生に桑野通子というキャスト、女性映画の松竹の面目躍如である。わずかなシーンながら女…

半世紀ぶりの神宮球場

運転免許証の更新通知が来たので自主返納し、運転経歴証明書を取得した。マイナンバーカードや旅券は持ち歩きたくないので、これからは更新なしのこの証明書がIDの保証となる。退職後すぐマイカーは処分したので、この十余年やむなく子供の車を借りたとき以…

『戦争と平和』を読む

南條竹則『酒と酒場の博物誌』(春陽堂書店)のなかに「『ラインガワ』の荒川さん」という一文がある。「ラインガワ」は著者が若い日、よく訪れた渋谷のワインバーで、四方田犬彦『先生と私』の由良君美もなじみの一人で、片手にパイプを持ちおいしそうにふ…

「夢の通ひ路」

三月二日。東京マラソンのエントリーに東京ビックサイトに行ったところ外国人がずいぶんいてコロナ明けを実感した。昨年秋の東京レガシーハーフはそれなりの成績でフィニッシュできたから、その余勢で今回も!とはいえ、加齢とともに弱気に陥りやすくなるの…

『風と共に去りぬ』にのめり込んで

二月一日、横浜市保土ヶ谷区において歩行者の男性が切りつけられた事件で、六十二歳の男が逮捕された。容疑が事実とすれば、なかなか悪のエネルギーをもつ六十二歳だが、平成令和の六十代のイメージだと特段の驚きはない。 松本清張『黒い画集』(新潮文庫)…

初春に読書計画

お正月。ことしの読書計画を練る。主題はお酒。まずは吉行淳之介編『酔っぱらい読本』全七巻という格好のアンソロジーがあり、酒にまつわる魅力的な小説やエッセイや落語や古今東西の詩がずっしりと詰まっている。最終巻の奥付は昭和五十四年十一月二十八日…

足取りも、心も軽く

最近Amazon musicの仕様が変わって、聞いてみたいアルバムをチョイスするとシャッフルで二、三曲は再生されるが、つぎにはおなじジャンルのおすすめ曲なるものが流れる。つまりアルバム順に一気通貫で鑑賞できない。まあ賛否あるだろうが、わたしには大きな…

生花と造花

十一月早々、オミクロンに対応するワクチン接種の通知が送られて来た。今回で五回目となる。しないわけにはいくまいと日程を見ると、十二月二十四日土曜日、クリスマスイブの午後というけっこうな日に割り振られたものだが、無職渡世の老爺にもそれなりにつ…

東京レガシーハーフマラソン2022

十月三日、第二百十国会(臨時会)の開会式が、天皇陛下御臨席のもとに行われた。これをよい機会ととらえたか、岸田首相は政権発足時からの政務秘書官を代え、自身の長男を就かせたと公表した。批判的な論調はけっこう多いが「適材適所」で余人を以て代え難…

手芸と料理のじょうずな力士

Amazon Prime Video魅惑のモロクロラインナップで「死の十字路」(一九五六年日活)を鑑賞した。原作は江戸川乱歩、この作者がこのようなスリラー作品を書いているのを知らず、ほかにおなじ系統のものがあれば併せて読んでみたいと思った。 夫は商事会社の社…

摂生と不摂生

八月二十日新型コロナの四回目の接種をした。場所は文京区シビックセンターの展望ラウンジのある二十五階で、接種はいやだがラウンジからの眺めはよい付加価値である。 接種後十五分は事後観察があり、それが済むとエレベーターで一階へ下りた。とちゅう同世…

「梨泰院クラス」讃

英語学習テキストOXFORD BOOKWORMSでチャールズ・ディケンズ『デイヴィッド・コパーフィールド』を読み、引き続き岩波文庫の訳書全五巻に進み、第一巻を読み終えた。学習用テキストのおかげで呑み込みも早く快調に進んでいる。 OXFORD BOOKWORMSでは次にトー…

吉田茂国葬の日

「殺人を無罪にする方法」(Netflix)シーズン1は法廷ドラマとミステリーをひとつにした興味深い内容だったがすべてを視聴するとなると6シーズン、90エピソードにのぼる。隠居とはいってもこれを全篇見るのはきつくシーズン1で終えることとした。あえて難を…

あじさい、ひまわり、ライラック

六時に起床しラジオのニュース、天気予報を聞き、洗顔、歯磨き、そうしてストレッチ、筋トレ、ジョギング、シャワーのあと食事をしながらNHKBS1の国際ニュースを見るのが朝の日課だが、ロシアによる侵攻で、ウクライナの惨状が気の毒なうえにプーチンやラブ…

水色の季節に

暇も退屈も好きだから國分功一郎『暇と退屈の倫理学』はまえから気になっていて、さきごろ新潮文庫に入ったのでさっそく手にした。評判通りおもしろく、哲学者、思想家がこんなに暇と退屈を論じていたのかと驚いた。 佐藤春夫に名著『退屈読本』がある。著者…

日本の牡丹はロシアでは咲かない

昨年英語の辞書を紙から電子に変えたところ、なかに語学学習用のテキストとして「OXFORD BOOKWORMS」という読物群が収められていた。難易度で六段階に分けられており、いまようやくレベル3まで来た。 内容はアンネ・フランク、ガンジー、ジョン・F・ケネデ…

辛夷と桜

本を読むのにいちばん参考にしたのは丸谷才一氏の書評、および同氏とその書評グループの、はじめは「週刊朝日」、のち「毎日新聞」に載った書評群、次が「週刊文春」連載の「本を狙え!」をはじめとする坪内祐三氏の書評だった。残念ながら二0一二年に丸谷…

英語の勉強

拗ね者として聞こえた金龍通人という人がいて、自宅の戸口に「貧乏なり、乞食物貰ひ入る可からず」「文盲なり、詩人墨客来る可からず」の聨を懸けていたという。 薄田泣菫『茶話』の「玄関」というコラムにあった話だが、残念ながら通人がいつの時代のどうい…

大相撲初場所

元旦。おめでたい和歌を三首。 「春毎に松のみどりの数そひて千代の末葉のかぎりしられず」(志賀随翁) 「たらちねのちとせのよはひ末高くかはらぬやどにきますたのしさ」 「万代のとしにもあまる君がやどにとも引つれてあそぶ老鶴」 大田南畝『一話一言』…

真珠湾攻撃と俳句

十二月。それまで忘れていても月はじめになると歳時記を手にするのが長年のくせというか習慣になっている。 「路地ぬけてゆく人声や十二月」(鈴木真砂女) どうして十二月なのかと思わぬでもないが、ほかの月と違って音数が五音なので坐りがいいね。 「どぜ…