日記から
クエンティン・タランティーノ『その昔、ハリウッドで』(文藝春秋)を読んでいる。映画のノヴェライゼーションとのことだが、スクリーンにはなかった映画談義がどどーんとぶち込まれていて、楽しさ満載、ずいぶんとお得感がある。田口俊樹氏の訳筆も大いに…
語学学習用にリライトされたシャーロック・ホームズ短篇のアンソロジーを終えたので、いよいよコナン・ドイルの原文に進んだ。とはいえ一人立ちはまだ難しくまずは柴田元幸、西村義樹、森田修の先生方による『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』に取り組…
佐々木康監督「蛍の光」と「純情二重奏」をみた。いずれも初見で、前者は昭和十三年、後者は翌十四年の松竹作品。 「蛍の光」は女学校の生徒に高杉早苗、高峰三枝子、先生に桑野通子というキャスト、女性映画の松竹の面目躍如である。わずかなシーンながら女…
運転免許証の更新通知が来たので自主返納し、運転経歴証明書を取得した。マイナンバーカードや旅券は持ち歩きたくないので、これからは更新なしのこの証明書がIDの保証となる。退職後すぐマイカーは処分したので、この十余年やむなく子供の車を借りたとき以…
南條竹則『酒と酒場の博物誌』(春陽堂書店)のなかに「『ラインガワ』の荒川さん」という一文がある。「ラインガワ」は著者が若い日、よく訪れた渋谷のワインバーで、四方田犬彦『先生と私』の由良君美もなじみの一人で、片手にパイプを持ちおいしそうにふ…
三月二日。東京マラソンのエントリーに東京ビックサイトに行ったところ外国人がずいぶんいてコロナ明けを実感した。昨年秋の東京レガシーハーフはそれなりの成績でフィニッシュできたから、その余勢で今回も!とはいえ、加齢とともに弱気に陥りやすくなるの…
二月一日、横浜市保土ヶ谷区において歩行者の男性が切りつけられた事件で、六十二歳の男が逮捕された。容疑が事実とすれば、なかなか悪のエネルギーをもつ六十二歳だが、平成令和の六十代のイメージだと特段の驚きはない。 松本清張『黒い画集』(新潮文庫)…
お正月。ことしの読書計画を練る。主題はお酒。まずは吉行淳之介編『酔っぱらい読本』全七巻という格好のアンソロジーがあり、酒にまつわる魅力的な小説やエッセイや落語や古今東西の詩がずっしりと詰まっている。最終巻の奥付は昭和五十四年十一月二十八日…
最近Amazon musicの仕様が変わって、聞いてみたいアルバムをチョイスするとシャッフルで二、三曲は再生されるが、つぎにはおなじジャンルのおすすめ曲なるものが流れる。つまりアルバム順に一気通貫で鑑賞できない。まあ賛否あるだろうが、わたしには大きな…
十一月早々、オミクロンに対応するワクチン接種の通知が送られて来た。今回で五回目となる。しないわけにはいくまいと日程を見ると、十二月二十四日土曜日、クリスマスイブの午後というけっこうな日に割り振られたものだが、無職渡世の老爺にもそれなりにつ…
十月三日、第二百十国会(臨時会)の開会式が、天皇陛下御臨席のもとに行われた。これをよい機会ととらえたか、岸田首相は政権発足時からの政務秘書官を代え、自身の長男を就かせたと公表した。批判的な論調はけっこう多いが「適材適所」で余人を以て代え難…
Amazon Prime Video魅惑のモロクロラインナップで「死の十字路」(一九五六年日活)を鑑賞した。原作は江戸川乱歩、この作者がこのようなスリラー作品を書いているのを知らず、ほかにおなじ系統のものがあれば併せて読んでみたいと思った。 夫は商事会社の社…
八月二十日新型コロナの四回目の接種をした。場所は文京区シビックセンターの展望ラウンジのある二十五階で、接種はいやだがラウンジからの眺めはよい付加価値である。 接種後十五分は事後観察があり、それが済むとエレベーターで一階へ下りた。とちゅう同世…
英語学習テキストOXFORD BOOKWORMSでチャールズ・ディケンズ『デイヴィッド・コパーフィールド』を読み、引き続き岩波文庫の訳書全五巻に進み、第一巻を読み終えた。学習用テキストのおかげで呑み込みも早く快調に進んでいる。 OXFORD BOOKWORMSでは次にトー…
「殺人を無罪にする方法」(Netflix)シーズン1は法廷ドラマとミステリーをひとつにした興味深い内容だったがすべてを視聴するとなると6シーズン、90エピソードにのぼる。隠居とはいってもこれを全篇見るのはきつくシーズン1で終えることとした。あえて難を…
六時に起床しラジオのニュース、天気予報を聞き、洗顔、歯磨き、そうしてストレッチ、筋トレ、ジョギング、シャワーのあと食事をしながらNHKBS1の国際ニュースを見るのが朝の日課だが、ロシアによる侵攻で、ウクライナの惨状が気の毒なうえにプーチンやラブ…
暇も退屈も好きだから國分功一郎『暇と退屈の倫理学』はまえから気になっていて、さきごろ新潮文庫に入ったのでさっそく手にした。評判通りおもしろく、哲学者、思想家がこんなに暇と退屈を論じていたのかと驚いた。 佐藤春夫に名著『退屈読本』がある。著者…
昨年英語の辞書を紙から電子に変えたところ、なかに語学学習用のテキストとして「OXFORD BOOKWORMS」という読物群が収められていた。難易度で六段階に分けられており、いまようやくレベル3まで来た。 内容はアンネ・フランク、ガンジー、ジョン・F・ケネデ…
本を読むのにいちばん参考にしたのは丸谷才一氏の書評、および同氏とその書評グループの、はじめは「週刊朝日」、のち「毎日新聞」に載った書評群、次が「週刊文春」連載の「本を狙え!」をはじめとする坪内祐三氏の書評だった。残念ながら二0一二年に丸谷…
拗ね者として聞こえた金龍通人という人がいて、自宅の戸口に「貧乏なり、乞食物貰ひ入る可からず」「文盲なり、詩人墨客来る可からず」の聨を懸けていたという。 薄田泣菫『茶話』の「玄関」というコラムにあった話だが、残念ながら通人がいつの時代のどうい…
元旦。おめでたい和歌を三首。 「春毎に松のみどりの数そひて千代の末葉のかぎりしられず」(志賀随翁) 「たらちねのちとせのよはひ末高くかはらぬやどにきますたのしさ」 「万代のとしにもあまる君がやどにとも引つれてあそぶ老鶴」 大田南畝『一話一言』…
十二月。それまで忘れていても月はじめになると歳時記を手にするのが長年のくせというか習慣になっている。 「路地ぬけてゆく人声や十二月」(鈴木真砂女) どうして十二月なのかと思わぬでもないが、ほかの月と違って音数が五音なので坐りがいいね。 「どぜ…
本ブログはほぼ月に一度日記の抄録をアップしていて、ことし四月三十日付の日記抄「『太田南畝全集』」のなかで、レオ・マッケリーについて以下のことを書いた。 この人の作品ではいまだに「明日は来たらず」と「人生は四十二から」をみる機会に恵まれないの…
D・M・ディヴァイン『運命の証人』(中村有希訳、創元推理文庫)を読んで故水野晴郎の「いやぁ、映画って本当にいいもんですね~」を思い出し、「いやぁ、ミステリーって本当にいいもんですね~」とひとりごちた。 友人から「眠れる虎」とあだ名された弁護士…
十月になったので、若月紫蘭『東京年中行事』(明治四十四年刊)の十月の項を開いたところ「月始めより団子坂、国技館、花屋敷など、菊人形開園す」とあり、運動会、ボートレース、修学旅行などに触れたあとに「初旬より中旬にかけ一週間図書せり市立つ」と…
オンシアター自由劇場による映画「上海バンスキング」がネットにあり、さっそく視聴させていただいた。この芝居と同時代にいられたことはわたしにとって人生の大きなしあわせのひとつである。公開された一九八八年か翌年に池袋の文芸坐地下でみているがソフ…
文章を書くとき敬称をどうするかはけっこう悩ましい問題で、歴史的人物なら敬称は不要としても、この数年のあいだに故人となった方はどうすればよいか。昔から芸人とスポーツ選手は敬称なしが慣行とされているが、志ん朝師といったりもする。スポーツ選手が…
七月一日。一回目のワクチンを接種した。あらかじめ配布された問診票の項目に、質問がある方はチェックをしておくようにとあったからチェックを入れたところ、接種をまえに医師が、質問があるんですね、というので、今晩は晩酌してよろしいでしょうかと訊く…
『荷風全集』を読みながら荷風ゆかりの地や小説の舞台となったところを散歩している。この試みは今回が二度目で、さいしょは一九九七年から九八年にかけてだった。それまでわたしはほとんどカメラに縁がなく、使い捨てカメラを買っては目的地へと向かってい…
とくに用事のない日の午後は喫茶店で座っていたのに昨年の緊急事態宣言を機に自室で音楽を聴きながら、自分で淹れた珈琲を飲むようになった。きょう聴いたジュディ・ガーランド「Afternoon Tunes」は「ダニーボーイ」や「君去りし後」などのスタンダードナン…