2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

六義園散策

上野の喫茶店へ行くのに不忍池を通る。桜の季節は人出が多く、弁天堂の参道を抜けるのにひと苦労だ。先年ポケモンGOが登場したときもしばらくは同様もしくはそれ以上の人出で、はじめ弁天堂の社務所は境内でのしかるべきマナーを呼びかけたがさほどの効果は…

「心のにごり」(関東大震災の文学誌 其ノ十九)

「元暦二年のころ、大地震(おほなゐ)ふること侍りき。そのさまよのつねならず。山くづれて川を埋み、海かたぶきて陸をひたせり。土さけて水わきあがり、いはほわれて谷にまろび入り、なぎさこぐふねは浪にたゞよひ、道ゆく駒は足のたちどをまどはせり。い…

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

第一感は直球勝負の本格派投手のようなドラマ、だった。つぎに、本格派投手の前に類まれな、と加えなくてはと思った。 類まれなのなかにはマンチェスター・バイ・ザ・シーという町の美しく引き締まった映像の成分が多分にある。冬の町の凍てついた風景は人々…

時代を透視する力

ことしの一月ポーランドを旅したのを機に、この国とスターリニズムとの関連を知りたくてひさしぶりに林達夫「『旅順陥落』」(平凡社ライブラリー、初出は「新潮」一九五0年十月号)を読んだ。さいしょに読んだのは二十代のはじめで、それからいままで何度…

「カフェ・ソサエティ」

「ねぇ、ねぇ、このまえ『ミッドナイト・イン・パリ』でごいっしょしたきみたち、こんどは僕とあのころのハリウッドとニューヨークへ行ってみないか。おもしろい話があるんだよ」。 そんなウディ・アレンの親しい語りかけが聞こえてきそうな「カフェ・ソサエ…

「フリー・ファイヤー」

その昔、関西を本拠とする大暴力団が分裂して衝突を繰り返していたころ、ある飲み屋で、かたぎのおじさんたちが抗争ネタを話題にしているうちに、なかの一人が、どこかひとところに連中を集めてドンパチやらせたらよい、そのほうが市民に迷惑がかからない、…