2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『持ち重りする薔薇の花』

旧財閥系の企業の元社長でいまは名誉顧問、以前は経団連の会長職にもあった老実業家梶井玄二が旧知のジャーナリスト野原一郎に語る、世界有数の弦楽四重奏団ブルー・フジ・クヮルテットの三十年にわたるあれやこれやのお話。 梶井の条件は、プライヴァシーに…

「マネーボール」

貧乏球団のため、優秀で年俸の高い選手は雇えず、低迷が続くアスレチックス。同球団のゼネラルマネージャーであるビリー・ビーン(ブラッド・ピット)が、プレー経験はないものの、イェール大学で経済学を学び、特異なデータ分析を実践しているピーター・ブ…

「ステキな金縛り」

「ザ・マジックアワー」以来三年ぶりの三谷幸喜監督作品。 チョンボつづきの弁護士宝生エミ(深津絵里)が、弁護士事務所の上司速水(阿部寛)から、これが最後の機会といわれて、妻殺しの嫌疑で被告とされた夫の殺人事件を担当する。被告は、無罪を主張、ア…

『幻影の書』

本書のはじめの五六行を読んで、とりあえずパスしておこうと判断した映画ファンは相当に辛抱強い人だ。それほど映画好きにはこたえられない書き出しなのだ。〈誰もが彼のことを死んだものと思っていた。彼の映画をめぐる私の研究書が出版された一九八八年の…

What is life without love and whisky?

幕末佐倉藩の江戸留守居役で明治の文人、依田学海の日記『学海日録』を読んでいると、ときに、気のおけない仲間とともに花を愛でながら一献傾けるといったうらやましくなる酒の場面が出てきて、思わず口許がほころぶ。 明治四年七月朔日、学海は友人二人と広…

谷根千つれづれ草

十月三十日。朝、ジョギング。在職時は勤務日に走れる環境にはなかった。それがいまは週に五日は走る。一週、土日の二十キロから五十キロに伸びた勘定で、退職してからの大きな変化だ。練習成果を引っさげて東京マラソンに応募したが、あえなく抽選落ち。ホ…