2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

洲崎パラダイス(其ノ四)

■作家のまなざし 伝統工芸や絵画、舞踊などの技芸にたずさわる女性が、男女の情愛に悩みながらも、自身の専門的技術、芸術を支えとして人生の光を見いだしてゆく、芝木好子にはそのような作品が多くある。 代表作のひとつ『隅田川暮色』の冴子は、戦時中、友…

慰問のはなし

三遊亭圓朝門下に四代目橘家圓太郎という人がいた。新橋と浅草のあいだを、粗末でガタガタと音を立てて動くところからガタ馬車と呼ばれた乗合馬車が走っていた時代、この御者が吹く真鍮のラッパを高座で吹いて人気を博した。明治の二十年代のことで、ラッパ…

荷風の映画をもとめて

川本三郎『荷風好日』(岩波書店2002年)によると、永井荷風の作品をもとにした映画はこれまでのところ八本を数える。 いちばん新しいのは平成五年(一九九三年)に板東玉三郎の監督で、吉永小百合が主演した「夢の女」(松竹ほか)。その前年には新藤兼人監…