2019-01-01から1年間の記事一覧

フォンデル公園(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ十二)

国立美術館のすぐ近くにフォンデル公園があった。写真はそのほとりの運河。美術館の周囲を散策しているうちにたまたま行き当たった公園で、わたしの持つガイドブックには世界最大のフラワーパークとしてキューケンホフ公園の紹介があるだけでこの公園につい…

アムステルダム国立美術館(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ十一)

「ライクス・ミュージアム」と呼ばれるアムステルダム国立美術館。ライクスRijkは英語のSTATEにあたる。収蔵品としてはレンブラント「夜警」「自画像」やフェルメール「牛乳を注ぐ女」「手紙を読む青衣の女」など十七世紀オランダ絵画の充実で知られる。 二…

ダイヤモンド(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ十)

クルーズ船を下りてダイヤモンド工場へ行った。ここは四百年以上にわたりダイヤモンドの街として知られてきた。世界の王室のダイヤモンドを研磨した伝統は「アムステルダム・カット」の名前とともにある。 明治四年十一月から明治六年九月にかけて欧米を視察…

アムステルダム運河クルーズ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ九)

今回の旅では、アムステルダムの運河、ブリュージュの運河、セーヌ川と三度クルーズ船で巡航した。 パリでの自由時間ではエッフェル塔に上るよりセーヌ川のクルージングを選択した。察するに、高いところよりも水面に浮かぶのが好きらしく、これは旅をしてい…

アムステルダム中央駅(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ八)

運河を前にしてアムステルダム中央駅が建っている。一八八九年に開業したオランダ鉄道の駅で、中央駅の名の通りメトロ、トラム、バス、フェリーが発着する。鉄道に限れば一日三十万人が利用しているとのことだ。 ちょうど駅舎の前をトラムが走っていた。そし…

路地(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ七)

昭和十三年秋に渡欧し、およそ一年後に帰国した野上弥生子は『欧米の旅』で「ハーグを山の手の屋敷町とすれば、アムステルダムはそこからずっと活気のある下町に出て来た思いである」と二つの都市の印象を述べている。 活気ある下町としてのアムステルダム。…

岸の樹木(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ六)

アムステルダムの運河の岸には美しく黄葉した樹が並木をなしていた。おそらくマロニエかプラタナスだろう。 久米邦武編『米欧回覧実記』が運河沿いの樹木に触れていて「水ハ地上ノ堤ヲ流レユク、岸ニハ楊樹ヲ種ユ」とある。「楊樹」は日本語辞書ではヤナギの…

運河の都市(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ五)

アムステルダムという地名はアムステル川に由来する。この川は市内中心部で多くの運河に分割され市の北側にあるアイ湾に注ぎ込む。中央駅を基点として放射状に張り巡らされた運河群は世界遺産に登録されている。 アムステルダムに着くと小雨が降っていた。あ…

日本、オランダ、中国(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ四)

レンズ、ビール、ランドセル、ペンキ、ズック、ガラス、ゴム、カバンなどはいずれもオランダ渡来で日本語となった言葉だ。鎖国のあいだも徳川幕府はオランダとの通商は許可していて、この日蘭両国の関係は、明治維新のあとも日本人のオランダに対するイメー…

マグナプラザ(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ三)

美しいアーチを擁した建物が出迎えてくれた。ダム広場の近くにあるマグナプラザで、王宮の裏側に当たる。もとは郵便局だったがいまはショッピングセンターになっている。眺めていると世界一高貴なショッピングセンターのような気がしてくる。 岩倉具視を団長…

アムステルダム(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ二)

アムステルダムという地名は「アムステル川のダム(堤防)」を意味する。もともとは小さな漁村だったが、十三世紀にアムステル川の河口にダムがつくられて町となった。アムステルダム中央駅から続くダム広場はその中心で王宮、新教会、有名デパートなどが並…

エティハド航空機内で(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ一)

九月二十日ラグビーワールドカップ2019日本大会が開幕し、いま各地で熱戦が繰り広げられている。 日本は二十日の対ロシア戦につづき、二十八日にはこれまで勝ち星のなかったアイルランドにはじめて勝利した。数日前、ビアホールで子供と飲み、次戦で日本がア…

十数年ぶりのスプリングボクス

「春菊や今豆腐屋の声す也」(子規) 夏井いつきさんは『子規365日』でこの句に寄せて、子供の頃に硬貨と凹んだボールを渡され近所の豆腐屋へおつかいに行っていたと思い出を語っている。一九五七年生まれだから東京オリンピック前後の頃だろう。一九五0年…

山車と神輿

自宅が近い根津神社はこの時期、例大祭で賑わう。山王祭、神田祭とともに「江戸三大祭り」のひとつで、ことしは九月二十一、二十二の両日、町会では神輿を繰り出し、境内にはたくさんの露店が並んだ。 神社のホームページには、六代将軍家宣は幕制をもって当…

アクセルとブレーキ

ことし四月、東京、池袋で旧通産省工業技術院の元院長、八十七歳が運転する乗用車が暴走し、母子が死亡、十人が負傷した痛ましい事故があった。車を分析した結果ではアクセルを踏み込んだ形跡はあったがブレーキを踏んだ跡は残っていなかった。アクセルをブ…

日産動物園

日産自動車の西川広人社長(九月十六日付で辞任)は副社長だった二0一三年五月に株価があらかじめ決められた水準を超えたときに権利行使できる「ストック・アプリシエーション権(SAR)」という権利の行使日をズルして一週間遅らせ、およそ四七00万円多く…

難聴の記

朝、ジョギングをしたあとシャワーを浴びていると、右耳に膜が張ったような感じがして水が入ったのだろうと出そうとしたが、水のせいではないらしい。綿棒で水分と耳垢を取っても症状は消えなかった。 テレビの前で右耳を、ついで左耳をふさいだところ明らか…

「存在のない子供たち」

映画を評価するにあたって、現実をどれほどにとらえているかを重要な物差しとするならば「存在のない子供たち」は最高点を与えられてしかるべきだろう。その昔、「靴みがき」や「自転車泥棒」などイタリアのネオリアリズモ作品をみた人々のおどろきや感動が…

一日、一日を気持ちよく過ごそう

本屋さんで七月のちくま文庫新刊、大原扁理『年収90万円でハッピーライフ』を見ておもしろそうと思ったが、下流老人予備群が買っていてはハッピーライフにならないと判断して、図書館のホームページで調べてみると新刊文庫は予約待ちだったが、元版の『年収9…

「あなたの名前を呼べたなら」

ネタバレご注意ください。 階級を超えた愛と聞くとひどく古めかしく聞こえるけれど、インドでは農村部を中心にカーストの意識は根強く残っており、社会的身分を超えた恋愛はいまなおご法度なのだと認識を新たにした。 高層ビルが林立するムンバイに、貧しい…

2019南イタリア紀行(その三)

タオルミーナからメッシーナへ、そうしてフェリーでヴィラサンジョバンニへ。つまりシチリア島を離れイタリア本土に戻った。 きょう(1/21)の最終目的地はアルベロベッロ、とんがり屋根の家屋、トゥルッリが並ぶ街で、食事を終え午後十時ころ散歩をしてみた…

2019南イタリア紀行(その二)

一月十九日朝パレルモを発ちピアッツァ・アルメリーナの郊外にある、ローマ帝政時代の貴族の豪邸「カサーレの別荘」を見学。ほぼ全室の床をモザイク画が飾っていて、芸術的価値、資料的価値は高い。なかでいちばん目を引いたのはビキニ姿のお嬢さんたちでし…

2019南イタリア紀行(その一)

一月十六日午後、成田空港を発ってローマへ向かった。 現地時間の二十一時にホテルに着き、翌朝バスでポンペイへ。ここは昨年十二月に来たばかりで、今回は四度目の訪問となる。はじめてヨーロッパを旅したのは退職した二0一一年の秋で、訪れたのはローマと…

「よこがお」

訪問看護師の市子(筒井真理子)は一年ほどまえから末期がん患者の大石塔子の看護のために大石家に通っている。堅実で献身的な仕事ぶりは訪問先でも職場でも厚く信頼されている。大石の家では看護にくわえ、介護福祉士をめざす長女の基子(市川実日子)の学…

旅のあとに

全巻を読むまえにその精髄を知っておきたくモンテーニュ『エセー抄』(宮下志朗訳、みすず書房)を読み、予想していた以上の魅力を覚えた。これで『エセー』に取り組む条件は整った。 『エセー抄』を読み終えてビル・エヴァンス「Explorations」を聴いた。先…

「さらば愛しきアウトロー」

冒頭のキャプションには、ほとんど実話を素材にしているとあったけれど、それよりも、よくできた大人のメルヘンとして楽しく鑑賞しました。 フォレスト・タッカーは一九八0年代初頭からアメリカ各地で銀行強盗を繰り返したうえ逮捕と脱獄を十数回重ねた筋金…

「COLD WAR あの歌、2つの心」

二三か月前に映画館でもらった「COLD WAR あの歌、2つの心」のチラシに、ポーランドのモノクロ作品とあるのをみて、すぐに買い!を決めた。予断と偏見といわれれば甘受しよう。しかしわたしのなかにあるポーランドのモノクロ作品はハズレのない優れもの揃い…

「新聞記者」余話

映画「新聞記者」は大学新設計画を所管する文部科学省を跳び越して内閣府、首相官邸が情報を伏せながら積極的に推進している某医療系大学の新設計画に端を発している。本来は情報を開示して進めるものだが、ここでは官邸主導で極秘に行われている。 公開性を…

「新聞記者」

むかし、ウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」をみて、権力に遠慮、迎合しないアメリカ映画界の強さに感心した。近くは、米国における聖職者による性的虐待を扱った「スポットライト」や、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック…

戊辰戦争の弾痕

わたしのアガサ・クリスティー攻略作戦、今月は霜月蒼氏がクリスティーの総決算と讃える『終わりなき夜に生まれつく』だ。 貧しい青年ロジャーズは呪いの噂のある「ジプシーが丘」に建つ廃屋に魅せられる。散策するうちに美しい娘エリーと知り合い、恋仲にな…