アムステルダムの運河の岸には美しく黄葉した樹が並木をなしていた。おそらくマロニエかプラタナスだろう。
久米邦武編『米欧回覧実記』が運河沿いの樹木に触れていて「水ハ地上ノ堤ヲ流レユク、岸ニハ楊樹ヲ種ユ」とある。「楊樹」は日本語辞書ではヤナギの別称とあり、中国語ではポプラ(これもヤナギの一種ではある)を指す。『米欧回覧実記』には「焔硝ヲ製スル木炭ニ最良」とあり、マッチの軸木として用いられてきたポプラを連想させるが、どうもポプラには見えない。
もうひとつ『アンネの日記』には閉じ込められた生活のなかで隠れ家の窓から見える一本のマロニエの木が花開くのを見て、将来への希望を見いだす記述がある。
運河に沿う並木、とりあえずはアンネが隠れ家の窓から見た木としてマロニエと解しておこう。