2019南イタリア紀行(その一)

一月十六日午後、成田空港を発ってローマへ向かった。

現地時間の二十一時にホテルに着き、翌朝バスでポンペイへ。ここは昨年十二月に来たばかりで、今回は四度目の訪問となる。はじめてヨーロッパを旅したのは退職した二0一一年の秋で、訪れたのはローマとパリだった。

オプショナル・ツアーとしてポンペイと青の洞窟があり、歴史の好きなわたしはポンペイを選んだ。このときは埋もれた都市の遺跡におどろくばかりで何度か訪れるなんて思ってもいなかったのだが、こうして元気に足を運ぶことができるのはありがたいことだ。

写真はグラディエーター(剣闘士)の控室。

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同日。夜八時シチリア島行きのフェリーに乗船。

一月十八日早朝六時半パレルモ港に到着。すぐにバスでモンレアーレへ。パレルモから南西におよそ八キロ、カプート山(標高310メートル)に広がる地だ。

世界遺産に登録されている、贅を尽くした大聖堂はノルマン建築様式によるもので、一一七四年グリエルモ二世の命により建設がはじまり一一八二年に完成した。

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大聖堂の正面にはパントクラトール=全能のキリストの像が描かれている。ギリシア正教会で用いられる像に見えるが、調べてみるとビザンティン美術の影響を受けた西方教会においても用いているところがあり、この像はそのひとつとしてよいだろう。

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一九七八年にモンレアーレを訪れた常盤新平は『マフィアの噺』に、大聖堂を見学したあと観光バスはさらに高い山に登り、洞窟のなかのお寺へ行ったと書いているから、ここから上に洞窟寺院があることになる。なかなか奥が深そうだ。

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モンレアーレからパレルモに戻り、マッシモ劇場、ノルマン王宮などを訪ねた。

写真はマッシモ劇場、わたしはこの劇場を「ゴッドファーザーPARTⅢ」で知った。

大学を中退してオペラ歌手をめざしていたマイケル・コルレオーネの息子アンソニーがここでデビューを果たす。マイケルや母親ケイをはじめ家族はその姿をロイヤル・ボックスから見守っている。そして終演後、劇場を出た階段のところで反マイケル派が放った殺し屋がマイケルを狙った弾がそれ、娘のメアリーにあたってしまう。

コルレオーネ家の黄昏を描いたこの映画の後半はほとんどがこの劇場で撮影されていた。

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この日は昼前から自由時間で、ホテルから、ガイドブックにパレルモB級グルメを代表する店と紹介があったニ・フランコ・ウ・ヴァスティッダルまで四十分ほどあるき、名物のストリートフード、モツのパニーノに喰らいついた。味、ボリューム、価格ともに大満足。

お店の方に、ここは日本でも有名なお店ですよ、とガイドブックを開いたところ、おおよろこびで当の頁をスマホで撮っていた。

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昼食のあとはシチリア州立美術館へ。十五世紀後半に建てられたアバテッリス宮殿を利用した、中庭のある二階建ての瀟洒な美術館で、十四世紀から十七世紀にかけての絵画、彫刻が多数展示されている。写真の「受胎告知のマリア」(1473年、アントネッロ・ダ・メッシーナ)は本館所蔵の諸作品のなかでも有名なもので、わたしのような素人にもルネサンス芸術の高度さを感じさせる。

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美術館のあとは、クアットロ・カンティ、プレトーリア広場などパレルモ観光の定番を見てまわり、仕上げにマッシモ劇場(英語の音声ガイドで内部の見学ができる)かパラティーナ礼拝堂か迷った末、後者に足を運んだ。

礼拝堂は現在シチリア州議会議事堂として用いられているノルマン宮殿の二階にある。ノルマン宮殿は十一世紀にアラブ人が築いた城壁のうえに、十二世紀に入りノルマン人が拡張、増改築してアラブ・ノルマン様式の王宮となった。

地中海最大の島であるシチリアギリシア、ローマ、イスラムの文明が交差したところだから、それだけに歴史は複雑で、ノルマン宮殿はそれを体現した建築物である。

ノルマン宮殿の二階にあるのがパラティーナ礼拝堂だ。大理石のアーチにモザイク画がちりばめられた華麗な礼拝堂はまたキリスト教イスラムビザンチン文化が融合した独特の空間となっている。写真のキリスト像の下にある「聖ペテロと聖パウロを従えた玉座のキリスト」はキリスト教美術の最大傑作のひとつと評価されている。

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礼拝堂をでてクアットロ・カンティに近いオープンカフェでひとやすみ。もう夕刻が迫って来ている。

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カフェで長居して、帰り道、ニ・フランコ・ウ・ヴァスティッダルに再び寄り、こんどはアランティーニを買い、ホテルでのビールのつまみとした。このアランティーニも味、ボリューム、価格、言うことなし。

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パレルモはお世辞にも清掃行き届いた街とはいえないけれど、その末枯れた雰囲気が、みょうに旅行者の気をひく。東京でいえば隅田川もよいが荒川にもひかれる気持に似ている。