2019南イタリア紀行(その三)

タオルミーナからメッシーナへ、そうしてフェリーでヴィラサンジョバンニへ。つまりシチリア島を離れイタリア本土に戻った。

きょう(1/21)の最終目的地はアルベロベッロ、とんがり屋根の家屋、トゥルッリが並ぶ街で、食事を終え午後十時ころ散歩をしてみたところ、うれしいことにライトアップされた街並みが目に入ってきた。

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ブーツに喩えられる半島のかかとの部分に当たるプーリア地方はイタリアでも見どころの多い観光スポットとして知られるが、なかでも「トゥルッロ」(複数形は「トゥルッリ」)というとんがり屋根の家屋のアルベロベッロは最高の人気を誇る。

陣内秀信南イタリアへ』(講談社新書)によると、イタリア各都市の旧市街(歴史地区)はたいへんな観光資源だが、貴重な文化財として認識されるようになったのはそれほど昔のことでなく、一九六0年代になってからだった。ただしアルベロベッロは別格で、一九一0年代に早くも国のモニュメントとして位置づけられ、三0年代には法令で保存対象としての文化財に指定されていた。

白壁に円錐形の石積み屋根を載せた「トゥルッロ」は十六世紀から十七世紀にかけて開拓のために集められた農民が建てたのがはじまりで陣内前掲書には、この地方は石灰岩もしくは凝灰岩の層のうえにあり、どこでも少し掘れば良好な石材が得られる、それらをモルタルは使わず積み上げ、最後にドーム状の屋根を架けると完成する、とある。

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早々にロアルベロベッロ観光を終え、ポリーニャ・ア・マーレへ。

美しいアドリア海と崖のような高台の街とが好一対になったリゾート地、また観光スポットだ。

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有名な洞窟レストランで昼食をとったが、わたしは食事になるとビールにしようか、ワインにしようかとか、早く料理が来ないかな、なんて思い乱れ、往々にして写真を撮るのを忘れてしまう。ここでも同様で、面目ない次第だ。

食事のあとはマテーラへ。中央の岩山の上に立マドンナ・デ・イドリス教会のもと岩山をくり抜いた洞窟住宅群サッシが広がり、そのサッシが織りなすのが迷宮のような路地だ。

第二次世界大戦前後、マテーラのサッシ地区は南イタリアの貧しさの象徴と見なされていた。洞窟住居は家畜の檻を兼ねていたという。近代都市の尺度からすれば非衛生で、車も入れない町並は経済発展には向かない。新市街が発展するいっぽうでサッシ地区には貧困層が取り残された。

ようやく一九七0年代前半になって先進的な自治体が歴史的な保存・再生に取り組みはじめた。マテーラもそのひとつで、やがて悲惨なスラムは世界遺産の街となった。歴史的な保存・再生、そして人々の価値観の変化、となるとやはりイタリアにはルネサンスの経験が活きている。

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マテーラを観光したあとバスでナポリへ移動。翌朝、アマルフィ海岸をドライブし、アマルフィへ到着。昨年のイタリアの旅では、ローマからナポリへ来て、翌日アマルフィ海岸をドライブしたが、アマルフィには向かわずポンペイへ行った。さすがに今回は南イタリアに特化した旅だからアマルフィ観光は外せない。

サレルノ湾に面したアマルフィ海岸はソレント半島の南に位置しており、カンツォーネの名曲「帰れソレントへ」の地だから、バスでは現地ガイド氏がここぞとばかりこの曲を流していた。

アマルフィはピサやヴェネツィアジェノヴァと地中海の派遣を争った海洋都市国家で、ときにイスラム軍を撃破し、いっぽうで商業上の利益を得るため同盟を結んだこともあった。町の中心にある大聖堂はロマネスク、バロックイスラムビザンチンなどの建築様式が混在していて海洋国家のありようを示している。

この都市国家の最盛期は十一世紀だったが大聖堂は九世紀に建てられていて、早くから経済力をつけていたことうかがわれる。

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午後アマルフィを発ちローマへ。翌日の午前中はホテルの近くをぶらぶらし、だべり、写真はそのかんに街角で見かけ気になった「グレート・ギャッツビー」のショーのポスター。午後、帰国の途に就いた。

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