固唾を呑んで観た「ゴールド・ボーイ」

「ゴールド・ボーイ」を観ているうちに「仁義なき戦い」は撮影中ヒット間違いなしとさっそく会社は第二作の準備をしていたという話を思い出しました。そしてこの作品も続作があって然るべきだと確信しました。何回か固唾を呑んだあとのラストシーン、ここでケリをつけるのはもったいないと思っていたらエンドロールのあとに「ゴールド・ボーイ2」の前宣伝が出ました。

原作は中国の紫金陳というベストセラー作家の代表作のひとつ(中国語の原題を書くとネタバレになりますので止めておきます)とのことですが、もしも続篇がなければそれ用に改編しちゃっていいぞとわたしは勝手にOKを出していました。

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沖縄でホテルやリゾート施設などを幅広く運営している富豪の経営者夫妻が崖から突き落とされ死亡します。犯人は夫妻の一人娘の夫(岡田将生)で、夫婦ともに二十代、結婚して日は浅いが関係は悪化している。

おいおい早くもネタバレかなんて言わないで。これは物語のはじめで犯人や犯行の様子を明かす、犯人探しとは異なるプロットが特徴の倒叙ミステリーの手法です。だから犯人はやがて追い詰められてゆく、そのサスペンスで観客を引っ張って行くのだろうと推測したけれどそうじゃなかった。

犯人は人知れず突き落とし、警察は事故として処理し、完全犯罪に成功したはずだったのですが、突き落とすところがたまたま少し遠めの海岸沿いで写真を撮っていた中学生たち(羽村仁成、星乃あんな、前出耀志)のデジカメに小さく映っていたのです。しかもそのときカメラを操作していた少年は誤って動画モードにしていました。

どうやら倒叙ミステリーの基本、枠組みからは大きく逸れてゆく気配です。もちろんよい意味で。そして犯人と三人の中学生とその保護者、警察が絡んで騙し騙されに転じ、裏切り裏切られが重なるうちに犯罪は拡大再生産されます。ここから先はミステリーを紹介するマナーに反しますのであしからず。なお黒木華江口洋介北村一輝松井玲奈たちがしっかり脇を固めています。

「香港パラダイス」(1990年)、「就職戦線異状なし」(1991年)、「卒業旅行 ニホンから来ました」(1993年)など毎度楽しんでいた金子修介監督作品でしたがその後は怪獣映画を撮ることが多くなり、しばらくご無沙汰でした。でもここで大満足、やってくれました!