2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

退職五年目

桜のころは人事異動の季節だった。四十年近く官業に在り、年度末の三月二十日前後に異動の公表があった。サラリーマンの死命を制するといってよい人事だが自分が関係しなければ気楽で面白く、退職の翌年は発表の日にさっそくネットで異動表を見た。今年は二…

犬の岩(春の銚子で 其ノ十)

犬吠埼という地名の由来についてWikipediaには「諸説があるが、中でもよく知られるものが義経の愛犬『若丸』が岬に置き去りにされ、主人を慕う余り、七日七晩鳴き続けたことから犬吠(犬が吠く)と名付けられたという説である。他にはかつて一帯にはアシカ(…

鉄砲、パン、てんぷら(春の銚子で 其ノ九)

「犬吠埼 ロカ岬友好記念碑」は銚子市制施行六十周年及び種子島にポルトガル人が初めて到来した一五四三年から数えて「日葡友好四百五十年」にあたる一九九三年に建立されている。写真の碑文には「ポルトガルが、鉄砲伝来以来わが国にもたらした影響は文化・…

「マジック・イン・ムーンライト」

「マジック・イン・ムーンライト」の舞台は一九二0年代後半の南フランス。ウディ・アレンとフランスといえば「ミッドナイト・イン・パリ」(二0一一年)が思い出されるが、あの映画のパリがそうであったように今回の南仏リゾート地の風景や風物もおなじく…

「犬吠埼 ロカ岬友好記念碑」(春の銚子で 其ノ八)

「歌を歌って調子が外れるのがいるでしょう」「音痴か」「そういうのを犬吠岬と云うのです」「どうもよくわからない」「銚子の外れにありますから、だから調子っぱずれです」。内田百けん(もんがまえに月)『第三阿房列車』の「房総鼻眼鏡」にある話で、ぽ…

高浜虚子句碑(春の銚子で 其ノ七)

犬吠埼マリンパーク前にある高浜虚子の句碑「犬吠の今宵の朧待つとせん」。 昭和十四年四月、虚子が日本探勝会の吟行で来泊したときの句で、碑は昭和二十七年七月銚子ほととぎす会が建立した。 おぼろ月を詠んだ虚子にたいして初日の出を詠んだのが銚子を愛…

人を育てる

古今亭志ん朝が朝太の名で前座デビューした頃というから一九五七年(昭和三十二年)の話だろう。当時新国劇の脚本を書いていた池波正太郎は朝太を劇団に入れて、ゆくゆくは後継者にしたいと内幕で相談したことがあったという。 実現を見なかったのは落語ファ…

犬吠埼(春の銚子で 其ノ六)

関東平野の最東端、太平洋に突出した犬吠埼。岬の上には犬吠埼灯台が建つ。 灯台のふもとに掲示されていた解説には、この国産レンガで造られた初の灯台はイギリスの技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計・監督のもと文明開化の先駆けとして一八七四年…

「荒磯に波」(春の銚子で 其ノ五)

岩に荒波が打ちつけ、波しぶきのあいだを三角形のロゴマークが飛び出すーご承知、東映映画のオープニングで、「荒磯に波」が社内での正式名称とされている。撮影場所は犬吠埼で、案内してくださった地元のIさんは、写真の海岸附近で撮ったと聞いているとおっ…

「ギリシャに消えた嘘」

ミステリー映画や原作者であるパトリシア・ハイスミスのファンにはうれしく、堪えられない作品だ。 原作は邦題『殺意の迷宮』(榊優子訳、創元推理文庫)、小説ならびに映画の原題はThe Two Faces of January。 多くのハイスミスの小説とおなじようにこの物…

銚子電鉄(春の銚子で 其ノ四)

銚子と外川のあいだを走る銚子電鉄の電車。銚子〜仲ノ町〜観音〜本銚子〜笠上黒生〜西海鹿島〜海鹿島〜君ヶ浜〜犬吠〜外川、このかん時間にすると二十分。 この日、案内してくださったIさんは犬吠埼や君ヶ浜へ行くまえに、外川の駅で電車に乗ったわたしを待…

銚子駅(春の銚子で 其ノ三)

赤いトタン屋根が印象的だった銚子駅。昭和二十三年に、近くにあった航空隊の兵舎を移築して駅舎としている。JR東日本の総武本線の終着駅であり、銚子、外川間を走るちんちん電車、銚子電鉄の起点駅でもある。たしか二番線の端が銚子電鉄ののりかえ口になっ…

「ビッグ・アイズ」

一九六0年代「ビッグ・アイズ」シリーズによりアメリカポップアート界の寵児となったウォルター・キーンだったが、じつはその絵は妻マーガレットが描いていた。佐村河内守作曲とされた楽曲がゴーストライターによるものだった事件は記憶に新しいが、アメリ…

銚子大橋と渡船場跡(春の銚子で 其ノ二)

坂東太郎の異名をもつ利根川は群馬県利根郡みなかみ町にある大水上山に源を発し、茨城県神栖市と銚子の境において太平洋(鹿島灘)へと注ぐ。川のとちゅうが千葉と茨城との県境になっていて、対岸の茨城県側には鹿島アントラーズの練習場がある。 遠くに見え…

キャベツ畑と風力発電(春の銚子で 其ノ一)

三月末に銚子在住のYさんのおさそいで東京駅八重洲口から出ている高速バスに乗り銚子へ行った。ぜひ旅してみたいところだったので願ってもない機会となった。 銚子は江戸時代に利根川水運が開発され醤油醸造業と漁業が発展した町で、露地野菜を中心とする農…

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

第二次世界大戦下、ケンブリッジ大学の研究者アラン・チューリングは軍と諜報機関の申し出を受け、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読作業という極秘任務に従事した。 かれがめざしたのは暗号解読装置の開発製作で、発想はクロスワードパ…

旅の終わりに(土耳古の旅 其ノ四十八)

ある方が「空港でビールが買えるくらいのトルコリラを残しておきましょうよ、ビールがダメな人はジュース用。旅の終わりの乾杯用に」とおっしゃった。 わたしは盃をさしたりさされたりする宴会は好きではないが、何をどれほど飲むか、飲まないかは個人の自由…