2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

野柳地質公園(2015初夏台湾 其ノ二十三)

基隆に近い野柳地区には細長い岬の地形の地質公園があり、カッパドキアを思わせる奇岩群の風景が見られる。カッパドキアがアナトリア高原の火山でできた大地であるのに対し、こちらは一千万年におよぶ地殻運動、海蝕、風蝕の影響を受けた海岸景観で、自然が…

大雪の日に

今春からスポーツ庁が、勤労者のスポーツ活動への参加を促し国民の健康増進を図る「FUN+WALK PROJECT」をスタートさせる。その第一弾となるのが、スニーカー通勤のような歩きやすい服装を推奨するキャンペーンで、ねらいは、運動不足を感じている人の多い現…

基隆中正公園(2015初夏台湾 其ノ二十二)

日清戦争の結果一八九五年に日本は台湾を植民地とした。日本統治時代、海軍が駐留する軍港は基隆で要塞地帯として指定されていた。接収した時点では水深が浅く岩礁も多かったが、大型船舶が停泊可能な近代的な港湾として整備された。 その結果、基隆は日本内…

「排除の論理」

昨年の衆議院議員選挙で、希望の党が安倍政権の存続を脅かすかもしれないと注目を集めながら当時党代表だった小池百合子東京都知事の「排除」発言を機に急速に勢いが衰えたのは記憶に新しい。民進党の前原誠司代表は、希望の党にまるごと合流する意向だった…

「油屋」(2015初夏台湾 其ノ二十一)

宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」で十歳の千尋がトンネルを抜けるとそこにはありえないはずの町があって、ここの湯屋には土着の神々をはじめ妖怪、魔物が病気と傷を癒しに通ってきている。迷い込んでしまった千尋は湯屋を支配する湯婆婆という名の強欲な魔女…

「スリー・ビルボード」

ミズーリ州エビングという架空の田舎町。 何者かに強姦、殺害された娘の母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、犯人が捕まらないのに業を煮やし、町はずれにある長年広告主もないまま放置されている三枚の巨大な看板を借り受け、「レイプされて…

二・二八事件(2015初夏台湾 其ノ二十)

二0一五年七月二十二日都内で李登輝元総統の講演会が行われ、その要旨が報道されていた。台湾における民主主義の樹立は自身の生涯の誇りであると語った氏は「悲情城市」が描いた二・二八事件について次のように述べている。 日本統治下の台湾人は、異なる複…

「デトロイト」

一九六七年七月二十三日から二十七日にかけてアメリカ合衆国ミシガン州デトロイトで起きた暴動は州兵組織の動員を要した大規模なもので、死者四十三人、負傷者一一八九人、逮捕者七二00人を数えた。白人優位の社会のなかで繰り返されてきた黒人に対する警…

「悲情城市」再説(2019初夏台湾 其ノ十九)

大陸からやって来た国民政府の台湾統治は、日本の支配を脱した台湾がこれからどういった方向に向かえばよいかを選択する機会を奪ったことを意味する。日本の敗戦からの四年間、つまり「悲情城市」の描いた期間はそうした機会が失われてゆく過程だった。 映画…

「ベロニカとの記憶」

先日、朝の寝床で村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文春文庫)を読み終え、夕方から銀座の映画館で「ベロニカとの記憶」をみた。このまえ村上春樹の小説を読んだのは『ノルウェイの森』それとも『ダンス・ダンス・ダンス』だったか。…

「悲情城市」(2015初夏台湾 其ノ十八)

「あなたがこれまでみた最高のハリウッド映画は?」なんて質問されても困る。日本映画についても同様だ。ただし台湾の映画となれば話は別で、答えは決まっている。それほど台湾映画に接しているわけではないのを承知の上で言うのだけれど、わたしのベストは…