「油屋」(2015初夏台湾 其ノ二十一)


宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」で十歳の千尋がトンネルを抜けるとそこにはありえないはずの町があって、ここの湯屋には土着の神々をはじめ妖怪、魔物が病気と傷を癒しに通ってきている。迷い込んでしまった千尋湯屋を支配する湯婆婆という名の強欲な魔女のもとで千という名を与えられて働くこととなり、想像を超えた出来事を体験するのだが、この湯屋が油屋である。
九份とは関係なく発想された物語だが、写真の建物は映画の湯屋とよく感じが似ている。東洋風なメルヘンの不思議さを漂わせていて、油屋のヒントとしたのではないかと考えたくなるのも当然だ。
小さい頃、家の近所に油屋という葬儀社があった。堀辰雄立原道造が軽井沢の定宿とした旅館が油屋だった。油を売ってないのに油屋は葬儀屋になったり、風呂屋になったり、旅館になったりする。京都には俵は売っていないのに俵屋という高名な旅館がある。