二・二八事件(2015初夏台湾 其ノ二十)


二0一五年七月二十二日都内で李登輝元総統の講演会が行われ、その要旨が報道されていた。台湾における民主主義の樹立は自身の生涯の誇りであると語った氏は「悲情城市」が描いた二・二八事件について次のように述べている。
日本統治下の台湾人は、異なる複数の集団に属しつつも、それらのいずれにも完全には所属することができず、それぞれの集団の境界にいる人間であり個人の尊厳というのも存在しなかったように思う。二・二八事件は台湾人自身の「台湾人とはなんぞや」という煩悶であり、外来政権ではなく自分たちの政権による主体性を確立しなければならないとの思いのあらわれであり、ここに新しい時代の台湾人としての自覚が覚醒した、と。一九四七年の二・二八事件からおよそ七十年、「台湾人とはなんぞや」はいまも問われている。
写真は九份の劇場にあった「悲情城市」のメモリアル。