永井荷風ノート

国勢調査異聞

日本ではじめて国勢調査が実施されたのは一九二0年(大正九年)十月一日だからこのほど行われた令和二年国勢調査は、第二十一回目、ちょうど百周年の調査となった。今回はとくに新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、ポスト投函やオンライン回…

会わざるの記〜もうひとつの荷風追想

永井荷風が亡くなったのは一九五九年(昭和三十四年)四月三十日、その三周忌を期して霞ヶ関書房というところから『回想の永井荷風』という本が刊行されている。 種田政明を代表とする「荷風先生を偲ぶ会」による編纂で、書名、出版時期からして荷風と接した…

多田蔵人編『荷風追想』を読む

五十九篇の追懐文を収めた多田蔵人編『荷風追想』(岩波文庫)のなかからはじめに鴎外の息子森於兎が「永井荷風さんと父」に書きとめたエピソードを紹介してみよう。 於兎の祖母つまり鷗外の母が心安い上田敏に「永井さんはどんな人?」とたずねたところ「一…

『文人荷風抄』

高橋英夫『文人荷風抄』(岩波書店2013年)は「文人の曝書」「フランス語の弟子」「晩年の交遊」の三章からなる。 著者は文人の属性のひとつとして曝書すなわち本の虫干しを挙げ、親の曝書は子供にとって言語世界に触れるだいじな機会であり、大きくいえば本…

荷風日記の二人の女優〜高清子と西条エリ子

先だって思いがけず「週刊新潮」誌上に高清子の名前を見た。 同誌に著名人が調べものについて広く問い合わせをする「掲示板」という頁があり、二0一三年七月四日号に筒井康隆氏が高清子について情報を提供してほしい旨の記事を寄せていて、「彼女の出演映画…

子規の梅、荷風の梅

自宅に近い根津神社に梅の花が咲いている。社殿にむかい左に白梅、右に紅梅、それぞれ一木が植わる。 群木いっせいに花開き、空をおおうほどにたなびく桜の光景の壮観とは異なり梅は一木一輪に可憐な美しさがある。梅林のひろい眺めよりも一木一輪の姿に惹か…

会わざるの記

先日、東京古書会館の古書市で買った丸岡明『港の風景』(三月書房)に「永井荷風」と題したエッセイが収められている。丸岡は三田出身の作家で、小説では「静かな影絵」や「街の灯」がよく知られていた。 「永井荷風」の初出は昭和三十四年五月号の「三田文…