不要不急の外出を控える日をまえに

危機管理の要諦ははじめにドーンと大きく厳しい網をかけて、改善したところから緩めることにある。小池東京都知事はこの週末二十八日と二十九日に不要不急の外出を控えるよう都民に要請した。大きく厳しい網である。

次が個々の問題で、わたしのばあいだと日課としている上野公園でのジョギングで、さいわいOKとのことだった。これをジョギングの可否といったところから不要不急の外出を協議するとなるとまとまる話もまとまらない。

危機にあって経済対策も例外ではない。米国トランプ政権は新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を和らげるため総額二兆ドル(二百二十兆円)にのぼる大型予算を計画し、議会で成立するはこびとなった。

安倍政権も緊急経済対策として国の財政支出リーマン・ショック後の対策の十五兆円を上回る金額とし、民間支出も含めた事業規模を三十兆円超にする方向で調整に入っているという。それはけっこうだけれど、富裕層はどうする、現金給付か商品券かなどの問題をあれこれ議論しているようで米国にくらべてずいぶんのんびりしている感は否めない。そうしてこの段階で和牛商品券だ、いや高級魚介類商品券だ、コロナウイルス禍が収束した際の旅行補助券はいくらがよろしいか、なんて騒いでいる国会のほうの先生方の季節外れの奮闘ぶりもニュースになっている。なんだか公園でのジョギングの可否から不要不急の外出を協議しているみたいだ。

ギリシアの哲学者クセノクラテスがずいぶん年老いてからも熱心に学校の勉強をしているのを見て、ある人が「いまだに学習しているなんて、この人は、いつになったら知恵がつくのだろう」といったとか。和牛や魚介類の商品券の先生方はいまだに経済対策の学習をされているのか、あるいは知恵はあっても商品券第一で失業者や中小企業の資金繰りの問題は二の次らしい。