ヴェネツィアン・グラス(伊太利亜旅行 其ノ五十)

イタリアから帰ってからヴェネツィアン・グラスでワインやウイスキーを飲んでいる。お酒は雰囲気で味わいたいほうだからグラスやコースターはよいものにしたくて、わたしにしては高価な買い物をした。
明治四年に米欧十二カ国の視察に出た岩倉使節団ヴェネツィアでガラス製造所を訪れていて、久米邦武編『特命全権大使 米欧回覧実記』にはその由来や製法がしっかりと書きとめられている。また同書には「スヘテ此島ノ玻璃ハ、著色ニ巧ミニ、奇巧百出ス、又繊糸トナシ之ヲ編組シテ、種種ノ物ヲ造ルカ如キ、ミナ此府擅場ノ技ニテ、欧洲ニ誉高ク、全島内ニ、此工ヲナスモノ四千人アリ」とある。
かつては四千人を数えた製造従事者だが、いまはどれほどか。なお、高い装飾性のあるテクニックは「軽業師の妙技」と呼ばれており、熟練した職人はマエストロと讃えられる。