ピラール広場(西班牙と葡萄牙 其ノ十一)


サラゴサのピラール広場。近くにはエブロ川が流れている。美しい大聖堂と町並み、整然とした長方形の広場はヴェネツィアサン・マルコ広場を想起させるが、ヴェネツィアのように観光客は多くなく、そのぶんのんびりした憩いの場となっているのがうれしい。
スペイン人については久米邦武編『米欧回覧実記』に「音楽舞踏ヲ好ミ……生産作業ヲ疎懶ニシ、勉ムルヲ屑(いさぎよし)トセス、午睡ヲ好ミ」とあり、また福沢諭吉は『世界國盡』に「元来此国の人は骨格もよく、勇気はあれども、兎角物事に勤る心なく、唯気位のみ高くして活計の道を励まず、頼母しからぬ風俗なり」と書いている。
明治のはじめ、近代化をめざす日本の指導者には「のんびりとした憩い」というのはいちばん理解困難だった精神風俗だった。