セルビアのイメージ(2016晩秋のバルカン 其ノ十四)


週刊文春」年末恒例のミステリーベストテンは日本推理作家協会員ならびに翻訳家、評論家等へのアンケートにより決定される。二0一六年の海外部門第一位にはピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』が輝いた。
さっそく読み始めたところパリの宝石店を襲った事件について「強盗犯は東の言葉を話していたという証言があり、セルビアあるいはボスニアの強盗団ではないかという意見が出た。やはり口が荒っぽいことで知られ、必要もないのに発砲した例が多々ある連中だ」という一節があった。
ミステリーの世界では、旧ユーゴスラビアを構成していたスロベニアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナセルビアモンテネグロマケドニアの六つの共和国のうち犯罪と結びつけられやすい国とそうでない国があるようで、なかでもセルビアのイメージはよくない。やはり一九九九年に西側諸国がセルビアを敵としてNATOによる空爆に踏み切ったことが影響しているのだろう。