Amazon prime videoにある魅惑のモノクロ作品群から「女相続人」を観ました。題名は前から知っていて優れた作品だろうとは推測していましたが、これほどまでとは思いもよりませんでした。いままでご縁がなかったのが不思議なくらいです。
一九四九年の作品で、冒頭、いまから百年前の物語とテロップが流れますので十九世紀中葉の物語と知れます。
裕福な家庭の令嬢と貧しい青年の恋愛模様に、ヒッチコックの「疑惑の影」や「レベッカ」に通じるスリル、サスペンスが加味され、そのなかで令嬢が奇妙な人格形成をしてゆきます。
妻に先立たれた裕福な医者は、娘の結婚を望むいっぽう、陰に陽に彼女が亡妻と比較してどんくさい、不細工だと語ります。そんないびつな家庭環境で生活する令嬢が、あるパーティでヨーロッパ帰りの青年と知り合い、恋に落ち、婚約をしたのですが、父は、無職の男の金目当ての振る舞いと結婚に反対します。男の正体と恋の行方への関心が静かな興奮を誘います。
監督はウィリアム・ワイラー。「必死の逃亡者」や「コレクター」の監督ですから当然とはいいながら、あらためてスリル、サスペンスを盛り上げるのに長けているなあと思いました。
主演はオリヴィア・デ・ハヴィランドとモンゴメリー・クリフト。先ほど「疑惑の影」や「レベッカ」にも通じるサスペンスと書きましたが、「レベッカ」の主演はハヴィランドの妹ジョーン・フォンテインですから姉妹の演技を比較しながら鑑賞するのも一興でしょう。原作はヘンリー・ジェイムズ「ワシントン広場」。
ネットにあるオリヴィア・デ・ハヴィランドの記事に、一九一六年生まれ、二0二0年に百四歳で亡くなったとあり、「風と共に去りぬ」でメラニー役を演じた昔の女優さんとばかり思っていたのですが、ついこのあいだまでご存命だったと知りました。