朝のマルクト広場と鐘楼(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ三十)

ブルージュの中心にあるのがマルクト広場だ。およそ1ヘクタールの骨格の大きな広場では十世紀以降、市が立ち、また集会やお祭り、処刑などもここで行われた。

十四世紀はじめに竣工した町のシンボルである鐘楼は八十三メートル、三百六十六段の階段をのぼるとブリュージュの町が一望できる。ここからは四十七個のカリヨン(鐘)が十五分おきに美しい音色の響きが聞こえてくる。

ローデンバックはこの鐘をこんなふうに描写している。

「毎日が万聖節の日のようなブリュージュの街々の、この灰色にそまった憂愁!尼僧たちの頭巾の白と司祭の長衣(スータン)の黒をもってつくられたようなこの灰色、しかもその灰色はこの都ではたえず流れただよい、浸透していく。永遠の半喪期から脱しえないこの灰色の神秘!」「鐘の音の歌もまた、どちらかと言えば黒を思わせよう。だが、これも天空のなかでぼやけ、溶けこんで等しく灰色のざわめきとなり、運河の水の上に尾をひき、はねまわり、波を打つのだ」。(窪田般弥訳)

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