アントワープをあとにしてブリュージュへ引き返し、そこからブリュッセルへ向かった。ブリュージュとブリュッセルのあいだは九十六キロメートル、バスで一時間二十分ほどの行程だ。
ブリュッセルはベルギーの首都、またEUの機関も多くある国際政治の重要都市である。いろいろと見て廻りたかったが、わずか半日足らずの滞在で、午後はパリへ行かなければならず、写真のサン・ミッシェル大聖堂は眺めただけだった。
このゴシック様式の聖堂は十三世紀から十五世紀にかけて建造されている。現代人からすれば悠長な話だが、ウィルナー・ゾンバルトは「中世では、生産に長い時間をかけるのがしきたりとなっており、何かの商品をつくったり、何かの仕事をするのに、一年、一季節をかけたものだ。完成させるために急ぐということはなかった」と述べている(『恋愛と贅沢と資本主義』金森誠也訳)。時間の観念が現代とは異なっていたのだ。