運河(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ二十六)

繁栄する貿易港、地域経済の中心地だったブリュージュは十五世紀に水流の変化と土砂の堆積により大打撃を受けた。

『死都ブリュージュ』を含む『ローデンバック集成』(高橋洋一訳、ちくま文庫)に収めるエッセイ「ブリュージュ」はその経緯を次のようにしるしている。

「一四七五年のとある日、北方の潮が突然引いた。この引き潮のせいで、砂を取り除いて、再び水流を蘇らすことができないまま、ツウィン湖は干上がってしまった。かくして幼な児らに滋養を与えてきた海という広大な乳房からそのとき以来遠ざけられたブリュージュは、衰弱し始め」た。こうして美しく富める都市は見捨てられ、末期を迎えようとしていた。

ところがこの瀕死の街は新しい運河を開き、外港を築いたことで息を吹き返し、よみがえった。ジョルジュ・ローデンバックが亡くなったのは一八九八年だったが、そのころには繁栄を取り戻すきざしが見られていた。

そしていまその運河は観光資源となり、クルージングの船が往来する。

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