ブリュージュには「北方のヴェネツィア」という異称がある。ヴェネツィア、ブリュージュはともに水の都であり、栄華と衰退という歴史においても似ている。
ローデンバックはヴェネツィアから見たブリュージュをこんなふうに述べている。
「今日忘れ去られ、哀れにもたった一人で閑散とした宮殿におわしますブリュージュは、実際、往時のヨーロッパにおける女王、伝説に名高き宮廷の豪奢を誇って波打ち際にたたずむ女王、しかもヴェネツィアが自分よりも幸福な姉妹として敬意を表しながらも水平線の彼方から嫉妬(ねた)んでいた女王だった」。
ヴェネツィアが嫉妬した姉妹都市、ブリュージュ!ヴェネツィアがブリュージュに贈った最大の讃辞だ。
ヴェネツィアのゴンドラの魅力はいうまでもないが、そこに木々が繁茂する光景はなく、ブリュージュは岸の樹木がクルージングに美しい彩りを添える。