らくだ岩(土耳古の旅 其ノ三十六)

後方に見えているのはらくだ岩。偶然の所産とはいえよくこんな奇岩が出現したものだ。奇岩群を「妖精の煙突」とはよく言ったもので、現地に立って、ここで妖精たちが暮らしていたんですなんて説明されるとなんとなくそんな気持になってしまう。
作家で大阪生まれ、大阪育ちの藤本義一さんは、国内国外問わずどこへ行っても、ああここは大阪でいえば十三や、ここやったら梅田やな、というふうにぜんぶ大阪の町に置き換えていたという。これを旅の流儀として、そこから旅の地の、また大阪の何かが見えてきたのではないかな。
こうした発想の先人には永井荷風がいて、パリの横丁に東京の路地裏を、セーヌ川隅田川を見て文学的感興を抱いた。
藤本義一さんがカッパドキアを訪れたとして、ここは大阪やったらどこと言っただろう。