ミケランジェロ広場で(伊太利亜旅行 其ノ十八)


フィレンツェの展望台として有名なミケランジェロ広場の中心にはミケランジェロの記念碑とともにダヴィデ像のレプリカが置かれている。
高校生のとき選択していた世界史の参考書目として羽仁五郎ミケランジェロ』を読んだ。「ミケランジェロは生きている、疑う者はダヴィデを見よ」。書き出しから熱が入っていた。冷めた眼でみればアジテーションふうな文章だが、時代背景を思えば、この岩波新書の赤版は迫り来るファシズムのなか多くの若い人たちルネサンスの輝きと自由の尊さを教え、勇気づけた。これがわたしがはじめて読んだイタリア関連の本だったが、さて、そこから先となると大学生のとき読んだマキアヴェリ君主論』くらいか。
このイタリア旅行をきっかけに読みはじめた須賀敦子の著作がいまわたしをイタリアへと導いてくれている。還暦を過ぎてこのような「ルネサンス」を経験しようとはまさに想定外の事態である。