森鴎外記念館

団子坂上、観潮楼址の森鴎外記念館がまもなく竣工し、この十一月一日に開館が予定されている。折しもことしは鴎外生誕百五十年にあたる。
永井荷風が『日和下駄』に、鴎外宅の一間の床には何か謂われのあるらしい「雷」という字を石刷にした大幅がかけられ、その下には「古い支那の陶器と想像せられる大きな六角の花瓶」が花一輪挿さないままに置かれてあり、それがかえって厳格また冷静に見えたと書いている。
床の間を飾った「雷」の掛物はとても印象深かったようで、歌人吉井勇も観潮楼で最も記憶に残っているのはこのたった一字の石刷の大幅だったと回顧している。
森鴎外記念館が本郷図書館に附設されていたころに何回か館内を見て廻っているけれど「雷」の大幅があったかどうか記憶にない。開館されたならまずこれを確認しなくては。