「告白、あるいは完璧な弁護」~旨みのある韓流サスペンス&ミステリー

「告白、あるいは完璧な弁護」(監督、脚本ユン・ジョンソク)は全編サスペンスとミステリーの旨みが味わえる出色の韓流作品でした。一時間四十五分にわたり味覚をそそられたあとは心地よさを伴いつつもいささか疲れを覚えたほどでした。

ホテルの一室で若い女性の死体が発見されます。発見そして通報したのはIT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)で、被害者は社長と不倫関係にあったキム・セヒ(ナナ)でした。部屋は密室状態で、第一発見者の社長は駆けつけた警察によりたちまち第一容疑者とされてしまいます。一貫して無罪を主張する社長を弁護するのは辣腕として知られる女性弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)で、両者は裁判での無罪を勝ち取るため真相究明に乗り出します。

容疑者ユ・ミンホは何者かに殴られて意識を失い、回復したときキム・セヒは殺されていたと主張しますが、密室状態の部屋に第三者が入室した形跡はなく、弁護士は実証にありったけの想像力を交え何者かが侵入した事実を追求します。じつは不倫関係にあった男女は前日に交通事故を起こしていて、周囲に誰もいなかったのをさいわいにこれを隠蔽していました。ところがさっそく脅迫状が届き、二人は脅迫者の指示でホテルに要求された現金を渡しに来ていたのです。

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こうして殺人事件に、交通事故の隠蔽と脅迫が絡みます。容疑者の告白は完璧な弁護をめざす弁護士を納得させるものではなく、彼女はそこのところをしっかり点検してあらゆる可能性を探ってゆき、やがて何者かがホテルの一室に侵入したのもありえない話ではなくなるのですが……。

平安時代を舞台に、ある武士の殺害事件の目撃者や関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿をそれぞれの視点から描いたのは黒澤明監督「羅生門」でしたが、この映画では容疑者の告白と弁護士による検証の異同が物語を二転、三転させるという展開を含みながら謎が解き明かされてゆきます。どうです、面白そうでしょう?

なお本作は二0一六年のスペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」のリメイクとの由、ぜひ元版も見てみたい!

(七月四日 シネスイッチ銀座