「孤狼の血 LEVEL2」

前作「孤狼の血」は広島県の架空都市である呉原市でやくざの抗争を収束し、秩序を回復しようとして裏社会に深く食い込んだ刑事の物語でした。

刑事は対立する二つの暴力集団の調停を図ろうとしますが、警察内部の陰謀もあって上手くゆかず、組同士の攻防に巻き込まれ殺されてしまいました。ときは昭和六十三年、大上章吾巡査部長(役所広司)は死後たちまち伝説の刑事と化しました。

それから三年後。平成のはじめの呉原市では暴対法の施行を前に抗争は落ち着きをみせ、ドンパチよりカネの流れが定着しています。裏社会の秩序の構図を描いたのは三年前、新任の刑事として大上の下に配属された日岡秀一(松坂桃李)で、大上の遺志を受け継いだ日岡の差配によりなんとか平穏がもたらされたのでした。

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そうしたところへ悪魔の異名をもつ上林成浩(鈴木亮平)が出所してきます。刑務所の看守たちが手こずり、もてあましたあげく、書類上は模範囚として刑期を早く終えさせた男で、シャバに戻った上林は、上林組組長として呉原市の平穏をまやかしの秩序としてぶっ壊しにかかります。状況は急変し、日岡は窮地に追い込まれます。

脱力するほどの面白さでした。前作に続く白石和彌監督のマジックに酔いしれた気分です。「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」のファンがニヤリとするであろうシーンも多く、立派な変奏曲となっています。

とりわけ鈴木亮平の上林成浩が「仁義なき戦い 広島死闘編」の大友勝利をパワーアップしたイメージで、大友役を演じた、先日亡くなった千葉真一に素敵なオマージュを捧げています。

騙し、騙され、裏切り、裏切られは組織と組織、人間と人間との関係を激しく動かし、ときにカオスをもたらします。やくざ映画の大きな魅力で、このことは本作においても暴力団同士の、また警察内部の刑事部門と公安部門との攻防に示されています。ただラストのアクションシーンに力点を置いたぶん、この点の描写が過剰な望みではありますが、やや深みを欠いたように思いました。いずれにせよ続篇がつくられるよう期待しています。

以下メモ書き。

1 エンドロールに有働由美子の名前が見えていましたが、どのシーンにいたのかな?

2 おなじく名前は記憶できませんでしたが、広島市呉市の機関が協力としてクレジットされていました。「仁義なき戦い」が広島でのロケを断られたことを思い、時代の流れを感じました。