「グッドライアー 偽りのゲーム」

ともにつれあいを亡くしたという高齢者の男女がインターネットを通じて知り合う。一見すると男は一癖も二癖もありそうな胡散くさい老爺、女は世間知らずで無垢な老女だ。さいしょのイメージどおり男が仲間を率いて詐欺を働いているのは早々にあきらかになる。いっぽう資産家の女には孫だという用心棒のような男が付いている。

このシチュエーションで二人はだんだんと親しくなり、やがて資産を統合してのもうけ話が持ち上がる。男の胡散臭さは一気通貫だが、たいする女の世間知らずと無垢は微妙に変化する。

こうなるといくら日本の、どんくさいわたしにもなんとなく筋は読めるけれど、イアン・マッケランヘレン・ミレンの演技バトルをまえにするとストーリーの読みなどどうってことはなくサスペンスはぐいぐいと盛り上がってゆく。そこに脇を固める、男の詐欺師仲間を演じるジム・カーター(「ダウントン・アビー」シリーズ)や、孫を称する男のラッセル・トベイらが絡む。

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定石というものがある。昔から人々が努力、試行錯誤を重ねるうちに定番化して、物事をなす際の最上とされる方法・手順となったものだ。この映画の作劇術はまさしく男と女の陰謀術策と騙し騙されのなかで二転三転するコンゲームというジャンルにおけるよくできた定石で、コンゲームには痛快という言葉が冠せられやすいけれど、ここではビターな風味が漂っている。

ホームラン級の「シカゴ」の脚本を担当したビル・コンドン監督が打ったしぶいヒットといった感じです。