ヴェローナのにぎわい(伊太利亜旅行 其ノ五十八)

旅から帰っていくつかのイタリア旅行記を開いてみた。ロミオとジュリエットの町だからそれぞれの屋敷やジュリエットの墓などのモニュメントを回ってきましたといった簡単なものはあるが本格的な紀行文は管見したなかでは唯一ゲーテの『イタリア紀行』のみだった。建造物や絵画を採りあげたあとでゲーテは広場のにぎわいをしるしている。
「広場は市の日にはいっぱいの人出だ。見透しがつかぬくらいの野菜と果物、堪能するほどの大蒜と玉葱。そのうえ一日じゅうわめいたり、ふざけたり、歌ったり・・・・・・温和な気候、安価な食物が、彼らの生活を安易にするのである。誰だろうと、いやしくも出られるものは、みな戸外に出ている」。
広場の両脇は商店街、くわえて広場の真ん中にはテント張りの食料品店、ファーストフードの店が並ぶ。わたしたちが訪れたのは日曜日だったからだろう、楽隊も繰り出すにぎやかさだった。