コルシア・デイ・セルヴィ書店(伊太利亜旅行 其ノ八)

サン・カルロ教会に向かって右隅にあるサン・カルロ書店。おそらく教会が附設している書店だろう。かつてここにコルシア・デイ・セルヴィ書店があった。訪ねあてて「あった!」と思った瞬間、サン・カルロ書店の文字にコルシア書店の文字が重なった。
コルシア書店は教会の「いわば軒を借りたかたち」であり「もともと物置だった場所を改造した狭い空間」だった。
「私のミラノには、まず書店があって、それから街があった。その街の中心は、まぎれもなく、あの地上に置きわすれられた白いユリの花束をおもわせる、佳麗な大聖堂だった」。
ただし大聖堂はきらびやかではあるが、精神性からはほど遠い、饒舌なゴシックだと須賀敦子は言う。その精神性を引き受けているのが夫ペッピーノたち「コルシア書店の仲間たち」なのだと彼女は秘めたる矜持を抱いていたと思う。