洞窟レストランで(土耳古の旅 其ノ三十一)


奇岩そびえるカッパドキアの洞窟レストランで出た壺焼きケバブ。ここへ来るバスのなかで現地のガイドさんが江利チエミの歌った「シシュ・カバブ」を流してくれた。
「さあ、さあ、いかがです、焼きたてのシシユ・カバブ、ええ、ええ、所変われば気も変わる、串カツと申しても・・・・・・」。「シシ・カバブ」とおぼえたこのコミックソングで小学生だったわたしはどのようなものかわからないながらトルコにカバブケバブ)という料理があるのを知った。
江利チエミが亡くなったのは一九八二年二月十三日、満四十五歳の若さだった。早いもので没して三十年以上が経つ。おなじテーブルの若い人に江利チエミって知ってますかと訊ねてみたが、みなさん一様にご存知なかった。
パンとのあいだにあるのはキノコ岩を模したワインのボトルで、いまわたしのテーブルで一輪挿しになっている。