エーゲ海の周辺は、古くはトロイ、ミケーネ、ミノスの文明を生み、さらにアテネやスパルタといった都市国家により形成されたギリシャ文明が栄え、時代が下がるとペルシャ、ローマ帝国、ビザンチン帝国、ヴェネツィア、オスマン帝国がこの地域に国家を形成した。
ヨーロッパとアジアを結ぶ海域は交易の要路であり戦略上の拠点だったと承知しながらも、思いは神話の世界やかつての文明、そして興亡を繰り返した歴史の残照に傾くのはいかんともしがたい。はじめてエーゲ海のほとりに立って眺めたのが日の名残りであったことがそうした思いをいっそう強めていた。
「多島海」と呼ばれるたくさんの島々が点在するこの海を船で廻ると島々は海の色と太陽に映えてときに青く、あるいは緑に、そして金色になって浮かんでいるように見えるという。