2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

瞬間日記抄(其ノ九)

フィリップ・マーロウは検察局の捜査課に勤めていたが組織のなかで生きるのを潔しとせず私立探偵に転じた。「あなたのようにしっかりした男が、どうしてそんなにやさしくなれるの?」と問われて「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれ…

瞬間日記抄(其ノ八)

マノリオ・ド・オリヴィエラ監督「夜顔」(2007年)をDVDで。パリを舞台とする男と女の綺譚。そのパリの風景が美しく、切なく、いとおしい。冒頭の、クラシックのコンサート会場から出てきたミシェル・ピコリが濡れた舗道をあるいて行くシーンではやくも、あ…

『昔日の客』

山王書房という古本屋さんがあった。一九一八年(大正七年)生まれの店主関口良雄さんが大森にこの店を開いたのは一九五三年(昭和二十八年)のことだった。それからおよそ四半世紀のちの一九七七年(昭和五十二年)に関口さんは五十九歳で没した。 古本屋の…

瞬間日記抄(其ノ七)

さいきん喫茶店で本を読む前に、早川真平とオルケスタ・ティピカ東京の演奏による「赤い靴のタンゴ」をiPodtouchで聴いている。過日、奈良光江の記事を書いた際にYouTubeで知ったこのヴァージョンはタンゴ楽団ならではの演奏と編曲の妙が愉しめる。78回転の…

『失われたものを数えて』

『失われたものを数えて』(河出書房)の著者高田里惠子さんは一九五八年生まれ。現職は桃山学院大学経営学部教授。専門はドイツ近代文学および日本におけるドイツ文学研究とドイツ文学受容の歴史。 ドイツ文学に限らず外国文学の「受容」は「需要」と密接に…