バシャチャルシヤ(2016晩秋のバルカン 其ノ二十五)


サラエボ旧市街のメインストリートはバシャチャルシヤと呼ばれる。オスマン帝国治下の十六世紀に設計された商業地区で、金属加工品や陶器、宝飾品の売買が盛んだった。カトリックや正教の地区もあるが全体としてはムスリムの色彩が濃い。第二次世界大戦後は西欧志向の街づくりが行われたので、サラエボでいまこうしたたたずまいのある地域はここだけだそうだ。
バシャチャルシヤはトルコ語に由来しておりバシャは主要な、第一を、チャルシヤは市場、バザールを意味する。街の中央に位置するのがセビリで、アラビア語で道をいう。独特の形状をした水汲み場があり、サラエボのシンボルのひとつとなっている。
通行人は多いが雰囲気はゆったりとしている。異文化の共生と融合を叫ぶだけではかけ声倒れであり、具体化するのは人々の出会いと理解で、そこから微笑みと幸福感が生まれる。
夕暮れどきのバシャチャルシヤを散歩しながらそんなことを思った。