「人生は祭りだ、共に生きよう」(モロッコの旅 其ノ四十九最終回)


夜のジャマ・エル・フナ広場は聞きしに勝るにぎわいだった。民族楽器を響かせて繰り広げられる大道芸人のパフォーマンス、ところ狭しと軒を並べる屋台、みやげものや名産品を扱うお店、そして世界中から集い来る人たち。このカオスが生むエネルギーとエキサイティングな光景に驚かない人はいないだろう。
特別な一日ではなく、連日の光景だから、ここでは毎日がお祭りである。しかもこのにぎわいは十一世紀にマラケシュが首都だったころから続いていると聞くと唖然茫然とするほかない。ここで思い出したのがフェデリコ・フェリーニ監督「8 1/2」の「人生は祭りだ、共に生きよう」というせりふで、広場はそれを体感させてくれた。
ひとまわりしたあと、ありがたいことに広場を一望できるレストランの席が確保できた。隣には両親と中学生とおぼしきドイツ人の家族がいて、英語でモロッコの印象を語り合いながら、しばしの日独交流の時間を持った。
こうして底知れぬパワーに圧倒されながらモロッコの旅のフィナーレの夜を過ごした。