充電風景

オーディオ機器は粗末なものだし、カメラは長年使い捨てでこと足りていた。車は通勤と業務上の必需品だったからやむなく乗っていたが、退職時によろこんで手放した。そんな男がいくつかの情報機器を持つようになるのだから世の中わからない。
たまたまiPhoneiPadKindleを同時に充電しなくてはならず、するとおなじコンセントから充電器のケーブル線がニョキニョキぐじゃぐじゃと延びる。デジカメが参戦すればより煩雑になる。見ているうちに人工呼吸器が装着されたり医療チューブが挿入されたりするのはお断りといってあるんだがと苦笑せざるをえなかった。
斎藤緑雨の警語に「おもへらく、親子兄弟、是れ符牒のみ。仁義忠孝、是れ器械のみ」とあるが、延命治療の不要は「符牒」の類にとうの昔に命じてある。その代わり情報機器のケーブル線は用いることにしよう。「器械」としては仁義忠孝よりだいぶん優れている。