剣玉(モロッコの旅 其ノ八)

写真で後ろに立つ男が剣玉であそんでいる。「望郷」のぺぺ・ル・モコ(ジャン・ギャバン)の手下のボディガードで、剣玉は日本古来のあそびと勝手に決め込んでいたわたしはこの映画を観て「あれっ」と思ったものだった。調べてみるとあのあそびはフランスが発祥の地とあった。
「望郷」の舞台はアルジェリアで、剣玉がどれほど広く行われていたかはわからないが、もしかするとおなじフランス領だったモロッコでも親しまれていたのかもしれないなどと期待しながら店先をのぞいていみたけれど残念ながら見当たらなかった。
ギャング映画ではしばしば子分がいろいろな小道具をつついているのを見受けるが、逢坂剛川本三郎『さらば愛しきサスペンス映画』によると、これは「望郷」の剣玉を嚆矢とするという。「暗黒街の顔役」でポール・ムニの手下のジョージ・ラフトが暇さえあればコインを投げているのもフランス渡来だったわけだ。