青の彩り(土耳古の旅 其ノ四)

ブルーモスクの正式名称はスルタンアフメト・モスクオスマン帝国十四代スルタン・アフメト一世により1609年から1616年にかけて建造された。設計はメフメト・アー。六本の優美なミナレットと直径27.5mの大ドームをもつこの建物は青い装飾タイルやステンドグラスの彩りの美しさからブルーモスクと呼ばれるようになった。
イスラム教の威信を示す建造物をもつイスタンブールだが、ここはどこかヴェネツィアの雰囲気を感じさせる都市でもある。文明の接点だった二つの都市は戦いを繰り広げるいっぽうで文化的な影響も及ぼしあったと考えられる。
イギリスの歴史紀行作家ジャン・モリスは『ヴェネツィア帝国への旅』のなかで「紀行や連想のなせる技か、背景の錬金術か、現在のイスタンブールで私はときどき、ヴェネツィアの気配を大気に感じることがある」と語っている。(椋田直子訳)