都電荒川線


都電荒川線三ノ輪橋駅。ここと早稲田のあいだを路面電車が走る。もとは王子電気軌道によって敷設された路線だったから、お年寄りのなかには呼び慣れた「王子電車」「王電」と口にする方もいらっしゃるとか。
スクリーンでは市川準監督の「東京兄妹」(1995年)と「トニー滝谷」(2005年)のなかの荒川線が印象深い。この監督はよほど荒川線に惹かれていたのだろう。
「東京兄妹」でわたしも荒川線のファンになった。池袋のビル群のネオンを遠景に夕闇のなかを走る電車と沿線の風景の美しさが心に沁みた。両親を亡くして以後二人で暮らす兄の日暮健一(緒形直人)と妹の洋子(栗田麗)、兄は古書店に、妹は写真屋に勤めている。住まいは沿線の雑司ヶ谷、近くに鬼子母神雑司ヶ谷墓地がある。兄の通勤時をはじめいくつかのシーンで電車が走る。軌道と車輪の擦れ合う音を通奏低音のようにして。